2013年6月21日金曜日

東京藝大 中嶋莉恵さんの講演会 開催!

講演会の様子
 
【講演会の中でスクリーンに映し出された仏像】
福井県 清雲寺の毘沙門天三尊像についての解説
 
中嶋さん制作の模刻像
清雲寺 吉祥天立像、善膩師童子立像
 
仏像修復についての事例
 
東日本大震災復興支援に藝大で制作の仏像
 
 福井県若狭地方の仏像
(中嶋さんが模刻制作に訪れた地域)
 
今月のBAC定例会には、東京藝大の中嶋莉恵さんをお迎えしての講演会
を開催しました。参加者は27名と大盛況。
 
藝大の展示会見学に訪れ、お話しさせて頂いたことがご縁で今回の講演会
開催となりました。「仏像愛好倶楽部」、「仏像サロン」のメンバーを代表して
お礼を申し上げます。皆さん、講演会に大満足でした。
 
中嶋さんは、現在、東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学 
保存修復彫刻研究室で教育研究助手をされています。
「せんとくん」制作者としても有名な薮内佐斗司先生の研究室と言えば、
直ぐにピーンと来ます。また、この研究室は岡倉天心の精神を受け継いで
おり、正に文化財保護の原点となっている組織と言えます。
 
最初に自己紹介と合わせ、学生時代以前に制作された作品をご紹介され
ました。いずれもインパクトのある作品であり、見事です。
 
中嶋さんは、もともと興福寺の阿修羅像や、聖林寺の十一面観音像の
ような乾漆つくりが好きだったようです。乾漆の技法に興味を持たれ、仏像
と修復について研究しようとされたそうです。ところが仏像の9割は木彫で
あり、木彫模刻の研究が必要となったとのことでした。木彫9割とは驚きます。
 
模刻研究についての丁寧な解説があり、制作過程を詳しく知ることができ、
仏像についての知識が深まりました。①調査の許可、②調査、③3Dデータ
スキャニング、④木取り、⑤粗彫り、⑥小造りと続きます。
 
また、「割矧ぎ」、「内刳り」、「割首」、「玉眼」、「想定復元」と言う専門用語
まで知り、一つも、二つも賢くなったように感じました。
「割矧ぎ」と「割首」はちょっと、ドキッとします。ドクターが手術のために、
メスを入れることを連想してしまいました。
 
模刻をする意義についてお話しされたことが大変印象的でした。模刻を
通して、先人達の技術を習得し、次の世代へ弾く継ぐための人材育成と
結論づけていました。全く同感です。我々としても、微力ながらご支援して
いきたいと切に願っております。今年のテーマでもあります。
 
仏像修復の事例や東日本大震災復興支援に制作された陸前高田の
「おやこ地蔵」など、素晴らしい仏像の数々。藝大の皆さんの志と卓越
した技量に感服いたします。
 
若狭地方の仏像について触れられた時に、「それぞれの地域の厚い
信仰心によりみんなで守っていることを知っていただければ」と話され
ました。中嶋さんが観音様に見えてきました。
 
仏像は、時代時代における人々の祈りを一身に受け、安らぎを与えて
きたのだろうと思います。これからは今まで以上に仏像の背負った歴史に
思いを馳せながら、拝観して参りたいと強く感じた次第です。
 
今回のご縁を大切にして、更に、ご縁が深まることを願ってやみません。
 
なお、中嶋莉恵さんはNHK・ETV特集「仏像の魂に挑む~東京藝術大学
若者たちの一年~」でご紹介されています。
 
東京藝術大学 大学院美術研究科 文化財保存専攻 保存修復研究室
 
 
 

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