講演会の様子
【講演会の中でスクリーンに映し出された仏像】
福井県 清雲寺の毘沙門天三尊像についての解説
中嶋さん制作の模刻像
清雲寺 吉祥天立像、善膩師童子立像
仏像修復についての事例
東日本大震災復興支援に藝大で制作の仏像
福井県若狭地方の仏像
(中嶋さんが模刻制作に訪れた地域)
今月のBAC定例会には、東京藝大の中嶋莉恵さんをお迎えしての講演会
を開催しました。参加者は27名と大盛況。
藝大の展示会見学に訪れ、お話しさせて頂いたことがご縁で今回の講演会
開催となりました。「仏像愛好倶楽部」、「仏像サロン」のメンバーを代表して
お礼を申し上げます。皆さん、講演会に大満足でした。
中嶋さんは、現在、東京藝術大学大学院美術研究科 文化財保存学
保存修復彫刻研究室で教育研究助手をされています。
「せんとくん」制作者としても有名な薮内佐斗司先生の研究室と言えば、
直ぐにピーンと来ます。また、この研究室は岡倉天心の精神を受け継いで
おり、正に文化財保護の原点となっている組織と言えます。
最初に自己紹介と合わせ、学生時代以前に制作された作品をご紹介され
ました。いずれもインパクトのある作品であり、見事です。
中嶋さんは、もともと興福寺の阿修羅像や、聖林寺の十一面観音像の
ような乾漆つくりが好きだったようです。乾漆の技法に興味を持たれ、仏像
と修復について研究しようとされたそうです。ところが仏像の9割は木彫で
あり、木彫模刻の研究が必要となったとのことでした。木彫9割とは驚きます。
模刻研究についての丁寧な解説があり、制作過程を詳しく知ることができ、
仏像についての知識が深まりました。①調査の許可、②調査、③3Dデータ
スキャニング、④木取り、⑤粗彫り、⑥小造りと続きます。
また、「割矧ぎ」、「内刳り」、「割首」、「玉眼」、「想定復元」と言う専門用語
まで知り、一つも、二つも賢くなったように感じました。
「割矧ぎ」と「割首」はちょっと、ドキッとします。ドクターが手術のために、
メスを入れることを連想してしまいました。
模刻をする意義についてお話しされたことが大変印象的でした。模刻を
通して、先人達の技術を習得し、次の世代へ弾く継ぐための人材育成と
結論づけていました。全く同感です。我々としても、微力ながらご支援して
いきたいと切に願っております。今年のテーマでもあります。
仏像修復の事例や東日本大震災復興支援に制作された陸前高田の
「おやこ地蔵」など、素晴らしい仏像の数々。藝大の皆さんの志と卓越
した技量に感服いたします。
若狭地方の仏像について触れられた時に、「それぞれの地域の厚い
信仰心によりみんなで守っていることを知っていただければ」と話され
ました。中嶋さんが観音様に見えてきました。
仏像は、時代時代における人々の祈りを一身に受け、安らぎを与えて
きたのだろうと思います。これからは今まで以上に仏像の背負った歴史に
思いを馳せながら、拝観して参りたいと強く感じた次第です。
今回のご縁を大切にして、更に、ご縁が深まることを願ってやみません。
なお、中嶋莉恵さんはNHK・ETV特集「仏像の魂に挑む~東京藝術大学
若者たちの一年~」でご紹介されています。
東京藝術大学 大学院美術研究科 文化財保存専攻 保存修復研究室
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