2013年12月26日木曜日

サントリー美術館「天上の舞 飛天の美」を観覧!


今年最後のBAC見仏会はサントリー美術館で飛天、雲中供養菩薩と
ご対面することとなった。

年末の慌ただしい時にも関わらず、16名の皆さんが10時開館に合わせ
美術館に集合した。ミッドタウンに着くも、なかなか会場に到着できずに、
入口を探し回った方も多い。確かに、最初は分かり難い。

 
平等院鳳凰堂の修理に伴い、国宝が特別公開となった。雲中供養菩薩や
飛天を間近で拝観できる絶好の機会だ。
 
展示は2フロアを使用している。最初に、インド・中国・朝鮮の飛天を紹介。
国が異なっても、極楽を願う気持ちは同じであり、飛天を通じて仏教世界
の共通性を認識できるかもしれない。
 
仏伝浮彫の3点は仏陀誕生を時系列的に理解する格好の彫刻と思えた。
「出家決意・出域」「マーラの誘惑・降魔成道・初転法輪」「梵天勧請」で
仏陀となり、仏教が誕生した。
 仏伝浮彫
「マーラの誘惑・降魔成道・初転法輪」
 
今回の展示で興味・関心が深まったのは、飛天と合わせて極楽に棲むと
言われている「迦陵頻伽(かりょうびんが)」と「共命鳥(ぐみょうちょう)」だ。
展示物の中に描かれた迦陵頻伽と共命鳥を確認しながら観覧したように
も思える。
 
印象に残った飛天と迦陵頻伽は法隆寺天蓋付属の飛天と、中尊寺の国宝
「金剛迦陵頻伽文華鬘」。

  法隆寺・飛天     中尊寺・迦陵頻伽文華鬘
 
飛天のお顔が白鳳期の仏像に見られる童子のような顔立ちで、愛嬌が
ある。(奈良博に寄託中、金竜寺伝聖観音菩薩のお顔にそっくり)
平等院の飛天と違った魅力を感じさせる飛天あり、親しみやすい。
 
また中尊寺華鬘に見える迦陵頻伽は姿形をくっきり表しており、寄り添う
姿も微笑ましい。迦陵頻伽をもっと詳しく調べたくなる。
 
仏像で印象に残ったのは、ヨガのポーズのように片足を上げ、体を捻った
像だ。蓮台を持つような仕草の像と合掌してる像から、観音と勢至の像と
判別できる。この身体のポーズにはどんな意味があるのだろうか?
 
また、神奈川・宝樹院の阿弥陀三尊像も見事。特に中尊の光背には飛天
が舞う姿が鮮明に彫られている。一度、宝樹院を参拝したいものだ。
 
二十五菩薩を引き連れた阿弥陀来迎図がいくつも展示されていた。来迎
の様子が、良く分かる。その当時の貴族たちはこの絵を眺め、極楽往生を
願ったのだろうと、想像した。
 
長いこと立ち止まって眺めたのは「文殊菩薩像光背」。船底のように反った
光背に細かい彫刻がなされていた。精密な彫刻に圧倒された。
 
ワンフロア降りて、雲中供養菩薩、飛天の展示された会場を観覧。
平等院鳳凰堂を模して雲中供養菩薩が壁掛けのように展示されていた。
一体、一体四方八方から拝観して行った。予想以上に大きく感じる。
意外にも僧形の菩薩に一番親しみを感じた。
 
雲中供養菩薩や飛天は、それ自体確かに素晴らしく見応えがある。しかし、
やはりお堂の中に荘厳されてこそ、その輝きが一際増すようにも感じた。
最後に、南20の模刻像と結縁を済ませ、今回の見仏会を終了した。
 
観覧後、ミッドタウンを出て、リーゾナブルな価格のお店で昼食を取りながら
歓談した。今年最後の見仏会、ご参加ありがとうございました。
            
 





2013年12月20日金曜日

牧野さん「寺社の植栽」について話す!


今年最後の定例会は会員27名、見学者4名の参加で、大賑わいとなった。
前月まで「ロノ字型」に机を並べての席にしていたが、30名を超えると席が
作れない。今月はやむなく「学校スタイル」に机を並べ、着席いただいた。

最初に、来月以降の研究発表予定と見仏会での訪問先についてご連絡し、
皆さんのご了承を頂いた。6月までの訪問予定が決定!!

近況報告では先月からご参加の朝比奈さんが奈良古刹を参拝されたこと
を話された。朝比奈さんは3年前からに仏像彫刻を始められたとのこと。
現在、彫っている薬師如来が完成間近であり、次の計画は如来の中の
如来、大日如来だそうだ。

大日如来を彫り始める前に、像のイメージを掴むために奈良・円成寺に
行かれ、運慶作・大日如来坐像を拝観されたとのこと。朝比奈さんには、
すでに仏師の気迫が漂っているように感じられた。
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本日のメインは牧野さんが話す「寺社の植栽」。牧野さんは、樹木や草花
について造詣が深い。半年以上も前から計画し、今回ようやく実現となった。

     スクリーンで解説される牧野さん    解説を聴く皆さん

牧野さんの研究テーマとなったきっかけは次の4点とのこと。
1.寺院・神社それぞれに特定の植栽はあるのか?
2.仏教の宗派ごとの特定の植栽はあるのか?
3.寺院の庭は何故美しく造園されているのか?
4.寺院・神社で良く見かける植栽とその効用(役目)は?

今も、この4つの視点で研究を継続されていることと思う。

大変興味深く拝聴したことは、寺院庭園の歴史を時代別に整理されて、
解説頂いたことだ。庭園はご本尊とお会いするためのアプローチであり、
庭園の持つ意味を理解することによって、参拝の魅力が倍増する。

寺社で良く見かける植栽とその効用一覧表は今後、寺院参拝時の必携
資料となる。
ベスト10は、「マツ」「イチョウ」「クスノキ」「カシ」「ケヤキ」「スギ」「シイ」
「マキ」「ウメ」「カエデ」だそうだ。

また、杉並区にケヤキが多いのは、杉並区は昔は農家が多く、ケヤキの
葉が肥料となることから多く植栽されたとのことだ。なるほどと納得。

「鎮守の森」の解説で、杉並区の現状について話されたことも、大変興味
深い。
①鎮守の森:現存28寺社(神社23・寺院5)
②貴重木、代表木がどういう木のことか、またその基準と実数
③区の緑の占有率22% (⇒ 23区中何番目か知りたい。)

「寺社の参道や庭園を歩き、植物の生命力を感じとって下さい」との結びは
大変印象に残った。参拝がより一層楽しみとなる。
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その他、今月学習したこととしては2点
1.国宝十一面観音立像7体

2.平等院鳳凰堂の創建歴史及び、ご本尊と雲中供養菩薩・飛天
  (サントリー美術館 「天上の舞 飛天の美」の事前学習)

 
定例会終了後、会場を変え、ご都合の良い方のみの忘年会を実施した。
参加者19名とこちらも大変賑やかな会となりました。
今年最後の定例会も楽しく有意義なものとなりました。ご参加の皆さん
のご支援、ご協力に心より感謝。 (合掌)




2013年12月12日木曜日

映画「天心」を鑑賞する!


昨日、シネマート新宿で「天心」を観た。天心没後100年の節目に
制作されたそうだ。岡倉天心の映画が上映されていることを知れば、
仏像愛好家の私としては見逃すわけにはいかない。

廃仏毀釈の嵐が吹き荒れる中、仏像や美術品を護ってくれたのは、
天心やフェノロサの尽力のお蔭だ。彼らがいなかったら、今日国宝
に指定された仏像の多くも焼失し、拝観することもできなかった訳だ。

天心の活動がどのように描かれているのか楽しみに、出かけた。
映画は昭和12年、横山大観(中村獅童)が第一回文化勲章を受章し、
新聞記者からのインタビューで師・岡倉天心(竹中直人)について
思い出を語る形で展開していく。

天心に従って、茨城県五浦に移り住み、日本画制作に没頭する
弟子4人(横山大観、下村観山、菱田春草、木村武山)の様子と、
師・天心の指導、影響を与える姿が克明に描かれている。

師と弟子との人間模様を詳しく知ることができたことと大観始め
日本画の巨匠を多く輩出した天心の功績を再認識できたことは
良かった。

仏像ファンの私としては、天心がフェノロサと調査した奈良の古刹
のこと、法隆寺夢殿で救世観音と対面した時のこと、更に仏像の
保護・保存活動にどのような活動をしたかなど、ほとんど描かれて
いないのが残念!!

古来からある日本的なものを大切に思う天心の姿をもっと具体的
詳細に描いてほしかったと思う。弟子4人がなぜ、天心に付いて
行きたいと思ったかも、もう少し描いてほしいと感じた。

横山大観の眼を通して描く岡倉天心像であり、描き方に制約と限界
があったのではないだろうか。


映画「天心」のフォトギャラリーから