2016年11月13日日曜日

神奈川県立 金沢文庫「忍性菩薩」展を観覧する


前日までの真冬日とは打って変わって、今日(12日)は小春日和の
良い日となった。10時、金沢文庫駅に11名が集合。極楽寺の諸尊像
は前々から拝観したいと願うものの、ご開帳日と訪問日が合わず、
実現しないままとなっていた。

「忍性生誕800年記念、関東興律750年」で、秘仏・極楽寺釈迦如来
立像が特別公開となった。楽しみにしていた特別展と言える。
「清凉寺式釈迦如来」と言えば、東京近辺では鎌倉・極楽寺、金沢文庫・
称名寺、東京目黒・大円寺の像が有名。

今回は、極楽寺像と称名寺像が同時に拝観できる。また、極楽寺は、
立像の他に、坐像の釈迦如来像も所蔵されており、今回出陳されている。
これも、楽しみの一つ。いずれも国の重要文化財指定を受けた像。

展覧会チラシ(表)(裏)
 
金沢文庫に到着し、学芸員の瀬谷さんから特別展について解説頂いた。
瀬谷さんには午後からの講座準備でお忙しい中、貴重な時間を割いて
頂いた。大変有難い。
 
忍性がどのような僧であったか、真言律宗が鎌倉新仏教との対比に
おいて、どのように位置づけられたか。清凉寺式釈迦如来は全国で多く
造立された。これこそ、真言律宗の布教を証明する事績とのこと。
最近の研究では、長谷寺式十一面観音像の広がりも、
真言律宗布教活動の結果だとする説もあるようだ。大変興味深い。
 
会場2階へ移動し、特筆する展示として、茨城・蔵福寺の阿弥陀三尊像
について解説して頂いた。この阿弥陀三尊像の開眼供養を仕切る導師を
忍性が勤めたのではないかということ。
 
忍性の東国下向を予知して、造立を開始し、像の完成を忍性の到着に
合わせたようだ。それだけ、忍性の人望、信任が大きかったかを物語る
事例とのこと。
<忍性は最初に常陸三村寺(茨城県)に入った>
 
また、忍性が、いきなり真言律宗の教義を広めようとしないで、地の宗教を
受け入れながら対応して行ったことも分かるとの解説もあった。柔軟な対応
によって、その後の展開が上手く行ったことだろうと想像できる。
 
(図録写真から転載)

茨城・蔵福寺 阿弥陀三尊像
 
極楽寺の釈迦如来坐像の印が大変珍しい。転法輪印(説法印)の掌が
左右反対の向きをしている。この像は、極楽寺多宝塔の中に安置されて
いた「金泥三尺釈迦如来像」に該当する可能性が高いそうだ。
「釈迦と大日を同体視して荘厳された」と図録での解説文に書かれている。
 
原点回帰で、戒律を重んじ、釈迦に帰れとする一方、釈迦と大日を同体視
するとは、真言律宗が密教の系統を引くことが容易に理解できる。
同じような転法輪印の像は、岐阜県・願興寺 釈迦三尊像(重文)の印相も
同じ。
 釈迦如来坐像      岐阜・願興寺 釈迦三尊像
 
次に目に付いたのは「忍性像」と「叡尊像」。師弟関係であり、お顔まで
よく似ている。特徴的な大きな鼻が印象に残る。叡尊は西大寺像が今年、
国宝に指定されたこともあり、一躍脚光を浴びた。「忍性の顔を思い浮かべ
ようとすると、叡尊の顔が浮かび、邪魔する」いう声がメンバーから聞こえた。 
忍性菩薩坐像            興正菩薩叡尊坐像
 
今回の最注目は、清凉寺式釈迦如来像。極楽寺像は、背筋を伸ばして
すっと立ち、爽やかな感じの像に見えた。一方、称名寺像は、少し、
前かがみで、考え込むようなお顔立ちをしている。個人的には、極楽寺像
の方が好きだ。
 
釈迦如来立像
極楽寺像       称名寺像
 
極楽寺像は善派、称名寺像は院派の仏師によって製作されたようだ。
西大寺の愛染明王坐像は善円作であり、また叡尊の念持仏であった
ことが知られている。極楽寺の像は、叡尊との繋がりで善派仏師に
よって造立されたことが想像できる。
 
また、称名寺仁王門の仁王像が院派仏師によって製作されたことも
記録がある。同じような時期に、善派や院派が鎌倉で競って仏像を
造立していたとは、凄い。
 
十大弟子像についても、極楽寺像と称名寺像の比較をしてみた。
極楽寺像の方が迫力、凄み、リアルさ、精神性などにおいて優って
いるように感じられる。称名寺像は老成したというより、これから修行を
するようにも見え、若々しい雰囲気がする。 
 
大迦葉像 
極楽寺像      称名寺像
 
阿難陀像
極楽寺像     称名寺像
 
極楽寺、称名寺創建の時代に登場した主要な人たちの生存年を
まとめると以下の通り。
生存年を並べることで、交流の有無を想像することができる。
 
観覧を終えた後、記念撮影をする。館内のレストランで 昼食を取り、
その後、希望者のみ、称名寺境内を散策した。ガイドブックに掲載された、
称名寺境内の石仏を探して本堂の裏山を歩いた。
記念撮影          称名寺側から入り口
 
境内の山道を散策
 
山道を時計回りに歩くと、最後に北条実時公の墓所に到着した。
今まで、何度も称名寺を参詣しているものの、今回が初めての墓参りとなる。
貴重な文化遺産を残してくれたことに感謝し、手を合わせた。
北条実時の墓

探し求めた、石仏について、ボランティアガイドの方や、境内の植木を
整備する庭師の人達にも尋ねるも、結局見つけることはできなかった。(残念)

称名寺山門
 
仁王門を眺めながら、帰途に就いた。今回も充実した一日となった。(合掌)


 

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