2017年1月21日土曜日

中嶋莉恵さん 3回目の講演会 開催!


1月20日の定例会は東京藝大・藪内教授の門下生 中嶋莉恵さんの
講演会を開催。中嶋さんは、彫刻家、高校教師、工房での仏像制作と、
多方面でご活躍されている。今回が3回目の講演会となる。

テーマは「川崎市多摩区登戸、真言宗豊山派寺院の光明院仁王像制作」。
荻窪東館からも4名の参加があり総勢29名と大盛況となった。

BACの新規会員が増えたこともあり、最初に中嶋さんとBACとの交流を
ご紹介した。仏像が取り持つご縁、仏縁と感謝している。ご縁は次の通り。
 【1】テレビ放映
  2013年4月20日(土)夜11時、Eテレのドキュメンタリー番組が
  放映される。
  タイトルは「仏像の魂に挑む ~東京藝術大学 若者たちの一年~」
  であり、中嶋さんの挑戦ぶりを視聴。真摯なお取り組みに感動する。

 【2】修了作品を観覧、その後の講演会開催へと繋がる
  同年4月28日(日)、東京藝大の陳列館での修了作品を妻と一緒に
  観覧した。会場で中嶋さんをお見かけし、ご挨拶の上、BACの活動に
  触れ、講演のお願いをする。

 【3】講演会の詳細打合せに東京藝大を訪問
  その後、数回のメールやりとりを経て、6月21日(金)開催が決定する。
  詳細打合せのため、5月31日(金)BAC幹事の橋本さんと一緒に
  東京藝大を訪問する。終了後中嶋さんのご案内で藝大の中を見学、
  藝大食堂で昼食をご一緒する。

第1回講演会 2013年6月21日(金)
 テレビで放映、紹介された仏像制作についての講演。中嶋さんの
 修士課程修了作品・福井県清雲寺の吉祥天立像と善膩師童子
 (ぜんじしどうじ)立像の模刻制作についてお話し頂いた。

 模刻により先人の心や技を学ぶ様子が良く伝わって来た。
 吉祥天立像のお顔立ちや気品のある表情は中嶋さんに
 そっくりだったように記憶している。

第2回講演会 2014年7月18日(金)
 館山市那古寺(なごじ)の木造阿弥陀如来坐像の修復について
 講演頂いた。テーマが模刻から修復へと変わった。修復の大変さ、
 根気のいる作業を初めて知り、応援したい気持ちになった。
 この講演を機会に、東京藝大の保存修復彫刻研究室にBACが
 寄付を始めることとなった。

☆今回の講演会☆
 最初に、仁王像制作に関わる関係者について紹介された。
 依頼主は稲荷山 光明院(真言宗豊山派の寺院)、制作請負が
 東京文化財センター、素材が青森ヒバ。
 青森ヒバを使用されるのは、ご住職が青森県ご出身であり、
 決定した。香りの良い、高価な素材。

 2014年から2016年の2年半にわたる仁王像制作過程が
 今回のテーマ。現在の工房ではどのように仏像を仕上げて
 行くのか大変興味深く拝聴した。総高3メートルもある
 大きな仁王像を造像する様子は、彫刻家のイメージより

 大工さんのように感じられる。繊細さと同時に頑強さが
 求められるように思えた。

 「鋸引き」「電動ドリルでの穴あけ」などと言う作業は、今まで
 抱いていた造像イメージと違う。現在の工房での実情を知り、
 大変驚いた。
 
 仏像制作には4つのステップ「原型制作」、「木彫」、「漆」、「彩色」
 があり、通常「漆」と「彩色」は専門家に渡すとのこと。
 今回は彩色まですべて4人で担当。2年半での完成は極めて速い
 とされる。

 特に、興味が湧いたものが「漆」と「彩色」。「木地固め」は、テレピン
 オイルと漆を混ぜたものを塗って、水分が像に入らないようにする
 とのこと。撥水効果を持たせる作業と言える。金箔を貼る像には
 必ず行うようだ。湿度、温度が高い程乾き安いとのことであり、
 大変な環境の中で作業することになる。

 「彩色」には白土で下地を作り、何層にも塗るということもお聞きした。
 天然顔料を使用し、赤も4層くらい塗るそうだ。実際には「色を載せる」
 と言う表現の通り、膠を接着剤にして色を載せている。
 何度も塗るようになったのはどうしてだろうか。体験的に回数が決まった
 のだろうか。
 
 また、背中には東大寺法華堂の執金剛神と同じように、繧繝彩色
 (うんげんさいしき)が施されている。紺丹緑紫(こんたんりょくし)と
 言う決まりがあるようだ。天平時代に、このような技があったこと
 にも驚かされる。この彩色は仁王像が仁王門に安置されると、
 隠れて目にすることができなくなってしまう。大変、残念であり、
 勿体ないと思う。

 天然顔料は色が落ちて来る時に、ナチュラルに落ちるそうだ。
 人工的なものは落差が大きいの対し、天然のものは徐々に変化する
 から受け入れやすいのかもしれない。

 像内に銘札を入れ、そこには中嶋さんのお名前も記されている。
 制作者のお一人として末永く記録され、歴史に残るとは羨ましい。
 50年、100年経って、修理の時には必ず確認される。

 一方で、責任の重さも感じる。名前が残るということは栄誉と責任
 の両方があるということか。

 仁王像制作のお話を終え、中嶋さんの作品(動物などの彫刻)も
 ご紹介頂いた。日本橋三越本店 本館美術フロアに展示された
 「雨上がりのロバ」は私の好きな作品だ。

 講演の後には質疑応答の時間を取り、参加者が自由に質問した。
 様々な質問が出た。
 「製作費はどのくらいかかるのですか」 「動物などを彫る時と、
 仏像を彫る時では気持ちの上で違いがありますか」
 「青森ヒバと言う、香りの良い木を使いながら、どうして彩色される
 のですか」「仏像は美術品ですか」など。皆さん、現実的なことや
 本質的なことなど尋ねていた。

 ぜひ、早い時期に登戸の光明院を参詣し、仁王像にお会いしたい
 と思う。「館山市の那古寺へも行きましょう」と言う声も上がった。

 3回の講演は「模刻」「修復」「新しい仏像造立」をテーマに、お話し
 頂いた。中嶋さんのステップアップぶりに敬服する。

 引き続き、BACでは中嶋さんを応援することを参加者一同約束した。
 作品の出展や個展を開く際は、早くご連絡くださいとお願いし、講演会を
 終了した。

 第4回の講演会は、どんなテーマで、いつお願いしようか?
  (今回は、諸般の事情で写真撮影を控えたため、画像はありません。)



 

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