五重塔初層の東西南北に天平時代の塑造群(❶、❷)がある。
国宝文化財としての名称は『塑造塔本四面具(五重塔安置)』
となっている。
❶塔本四面具構成図 ❷塔本四面具の画像
天平時代、塑造の国宝と言えば、東大寺法華堂の執金剛神立像、
戒壇堂の四天王立像や新薬師寺の十二神将立像などを直ぐ思い
浮かべる。それに比べ、塔本四面具の塑造群は印象が薄い。
また、法隆寺には、数多くの名品があるため、五重塔塑像群は
目立たない存在となってしまっているように思える。五重塔の
圧倒的な存在感に目を奪われ、内部まで目が届かないのか?
しかし、仏教教義の名場面を造形化したものが塔本四面具で
あり、メッセージ性から見れば、他の国宝塑造仏に勝るとも、
劣らない名品と思う。もっと注目されて良い。
維摩詰像土、維摩と文殊(❸)像の対比が良い。老獪な維摩と
若々しい文殊がどんな問答をしたのだろうかと想像させる。
また、北面涅槃像土の羅漢像(❹)は、お釈迦様の死を嘆き、
悲しむ様子を良く伝えている。
❸維摩居士と文殊菩薩 ❹涅槃像土の羅漢坐像
法隆寺には国宝の仏像が何体あるのだろうかと写真を眺め
ながら数えた時に、塔本四面具だけ、数え切れなかった
ことを思い出す。
そこで、文化財の数え方などについてまとめてみたい。
文化財では仏像の数を躯(く)と数える。
1.塔本四面具の国宝仏像は何躯だろうか?
答えは78躯(詳細は❶に掲載)
南面の弥勒仏像土では、国宝は弥勒仏1躯のみで、他は
後補のため国宝指定となっていない。南面は風雨の影響
を受け易いからか、劣化が激しく、後補の像が多い。
2.文化財の数え方と対象
文化財は1件、2件と数える。内訳を員数と言い、仏像
彫刻は1躯、2躯と数える。法隆寺金堂 釈迦三尊像の
場合は、「釈迦如来及両脇侍像」の名称で1件3躯となる。
文化庁の国指定文化財等データベースには、員数を記して
いるものと、記していないものとある。塔本四面具の場合、
員数は記されていない。(だから、数えるのが大変。)
◎京都宇治の平等院鳳凰堂と岩手平泉の中尊寺金色堂の場合
について、見てみたい。
<平等院鳳凰堂>
木造阿弥陀如来坐像<定朝作/(鳳凰堂安置)>1件1躯
木造雲中供養菩薩像(所在鳳凰堂)1件52躯
木造天蓋(所在鳳凰堂)1件1具
データベースに以上のように記録されている。3件の国宝
指定年度は、上から順に1951年、1955年、1956年と異なる。
従って、鳳凰堂内の国宝は3件53躯1具となる。
<中尊寺金色堂>
金色堂堂内諸像及天蓋 1件 (員数の記入はない)
員数を調べてみると仏像は32躯となる。阿弥陀三尊像や
六地蔵など多くの仏像と天蓋をひとまとめにして1件。
国宝指定された年度は2004年。
金色堂内の国宝は1件32躯(天蓋は1具か3具か?)
このように、どの括りや基準で指定を受けるかによって、
件数が異なってくる。どういう括りや基準かを調べること
も国宝仏の楽しみ方と思う。
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