今回取り上げるのは「聖霊院(しょうりょういん)」の
国宝文化財。聖霊院は、法隆寺の国宝建造物18件の内の
一つであり、内部に国宝文化財の仏像彫刻が安置されて
いる。
金堂、五重塔を囲む廻廊の外側、東西に東室(ひがしむろ)、
西室(にしむろ)がある(❶)。南北に細長い建物で、僧侶
の住居となり、僧房と呼ばれていた。
鎌倉時代、聖徳太子信仰の高まりに伴い、東室の南端部が
改造された。平安時代には聖徳太子を祀る仏堂であった
ようだ。
東室と聖霊院は別々に国宝指定されているのに対して、
西室は「三経院及び西室」として、1件の国宝指定と
なっている。
聖霊院は切妻造(きりつまづくり)、妻入(つまいり)の
正面に、大きな庇を付けた構造となっている(❷)。妻入、
平入(ひらいり)の違いは❸の通り。
聖霊院で催される年中行事に「お会式(おえしき)」がある。
聖徳太子の命日法要であり、3月22日~24日の3日間続く。
奈良時代、夢殿を造営した行信僧都(ぎょうしんそうず)が
始めた法要とのこと。1300年の長い歴史に圧倒される。
❶西院伽藍の聖霊院 ❷鏡池を前に聖霊院が建つ
❸平入・妻入
聖霊院の内部には3つの厨子があり、中央の厨子に聖徳太子像
が安置されている(❹)。2015年7月の法隆寺夏季大学に
参加し、初めて聖霊院の太子像にお目にかかった。汗だくに
なりながら、並んで一人ずつ太子像を礼拝したことを思い出す。
文化庁データベースでの名称は『木造聖徳太子<山背王、殖栗
王/卒末呂王、恵慈法師>坐像(聖霊院安置)』、員数5躯と
なっている。太子との関係(❹)は、子息、兄弟、師匠。
太子が威厳に満ちた表情をしているのに対し、侍者の4人は
どことなくユーモラスな雰囲気がする(❺)。侍者たちの表情
は、何を意図しているのか不思議に思う。
侍者の後に、地蔵と観音の脇仏を配し、慈悲深い太子ワールド
となっている。
❹聖霊院内部に3つの厨子 ❺聖徳太子と侍者像、脇仏
聖徳太子は「観音の化身」、「観音の生まれ変わり」などと
言われる。聖霊院像のX線写真は、そのことを物語っている
(❻、❼)。
像内に納められている銅造救世観音立像の頭部が、太子像の口
の部分と一致している。太子の発した言葉は、即ち観音の言葉
と言うことになる。また、救世観音の台座下には3つの経巻、
法華・維摩・勝鬘の三経が納められている。
❻X線写真 ❼像内納入品
庶民信仰で一番人気は観音さま、宗教者では聖徳太子か?
観音さまと聖徳太子が重なることで、益々人気が高まることは
想像に難くない。
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