2017年8月13日日曜日

出光美術館「祈りのかたち 仏教美術入門」


12日は猛暑が和らぎ、穏やかな過ごしやすい天候に恵まれた。荻窪グループ
の会員18名が、10時出光美術館に集合した。美術館は帝国劇場の9階。
皇居の緑が目に入る、場所に位置する。初参加の方も2名加わり、賑やかと
なった。

テーマが「祈りのかたち 仏教美術入門」であり、「仏像・経典・仏具」の展示
始め「密教」「弥勒・普賢信仰」、「浄土教」、「禅宗」と5部構成となっている。
出品数は約90点。その中で特に目を引いた作品とその理由をまとめてみた。
仏像彫刻好きのグループだけに、どうしても仏像が中心となる。
(画像は図録から転載)

展覧会チラシ

第1章 仏像・経典・仏具 ―かたちと技法
 最初に、注目したのは①青磁神亭壺(せいじしんていこ)。造形の美しさは
 目を見張る。墳墓埋葬品の中にあったようだ。穀物を入れる壺と思われる。
 色んな動物に交じって、二体の仏坐像が貼りつけられている。
 中国 西晋時代(265~316年)の作品。

 ②金銅仏三尊眷属像から法隆寺金堂の釈迦三尊像や橘夫人念持仏の
 阿弥陀三尊像を思い浮かべた。三尊像だけでなく眷属や光背の化仏まで
 造形してある。手を合わせたくなるような像だ。造立年代は東晋十六国時代
 とある。4世紀初期~5世紀初期。 
①青磁神亭壺   ②金銅仏三尊眷属像

 小金銅仏で関心を持ったのは③金銅仏坐像と④金銅仏立像の二体。
 ③像の衣が垂れている様子は、鎌倉市の仏像、法会垂下(ほうえすいか)
 を連想させた。④像は童子のような雰囲気を漂わせ、誕生仏のようにも
 思えた。③は中国 唐時代、④は朝鮮 統一新羅時代の作。
③金銅仏坐像    ④金銅仏立像

 出光美術館では仙厓義梵(せんがいぎぼん・1750~1837年)の作品を
 1000点近く、所蔵すると言う。⑤釈迦三尊十六羅漢図、⑥不動明王画賛は
 大変興味深い。
 ⑤では釈迦三尊と十六羅漢以上に、画の中央に描かれた龍と瀧に注目
 させられる。墨の濃淡で、龍や滝が浮き出たように見える。

 ⑥では不動明王の天地眼が極端なまでに、上下しており、ユーモラスな
 不動明王に親しみを感じる。忿怒の不動明王ではなく、愛敬の不動明王
 となっている。
仙厓義梵 作
⑤釈迦三尊十六羅漢図 ⑥不動明王画賛

第2章 神秘なる修法の世界 ―密教の美術
 密教美術では、不動明王、愛染明王や曼荼羅図も展示されているものの、
 一番の注目は、⑦⑧の四天王像と⑨密教法具。仏画は一般的に色が
 劣化した場合、画像の輪郭を捉えにくい。その点、彫像は色の劣化が、
 かえって味わい深くプラスに作用することもある。

 ⑦⑧像とも、奈良の天理市にあった内山永久寺の鎌倉復興時期に制作
 された作品とのこと。寄木造り、玉眼など鎌倉期造像の特徴を備え、慶派風
 の力強さを表現している。彩色も残り、保存状態も良いようだ。邪気の顔の
 歪みぶりも良い。 
⑦増長天像      ⑧持国天像
 
 密教と言えば、修法。修法には法具が必要とされる。金剛盤、五鈷杵、
 五鈷鈴の一式が最低限の密教法具のようだ。平安時代後期の作品。
⑨金堂密教法具

第3章 多様なる祈り ―弥勒・普賢信仰の美術
 多様なる祈りで、最も興味を引かれたのは、⑩山王本地仏曼荼羅図。
 描かれた仏・菩薩の組み合わせが凄い。中央に阿弥陀如来、向かって
 右側に、十一面観音と地蔵菩薩。左側には薬師如来と千手観音。前面
 右手に不動明王、左手に毘沙門天とオールスターキャストの顔ぶれだ。

 複数の尊像の集合であることから「曼荼羅」の呼称が使われただけで
 あり、鎌倉時代の神仏習合思想の高まりの中で造形化された画像のようだ。
 伝来では、日吉大社 (日吉山王権現)の本地仏を描いた図とのこと。
 仏・菩薩・明王・天と各層を代表する尊像に有難みも一入となる。
⑩山王本地仏曼荼羅図

第4章 極楽往生の希求 ―浄土教の美術
 この章での注目は、阿弥陀来迎図における観音菩薩の蓮台。お迎えに
 来られた場面か、極楽へお戻りの場面か。⑪図では、観音菩薩が持つ
 蓮台の上に往生者が乗っている。従って、これから極楽へ往生者を
 お連れするシーンとなる。

 一方⑫では観音菩薩が持つ蓮台の上には誰も乗っていない。こちらは、
 極楽からお迎えに来たシーンと言える。
⑪阿弥陀聖衆来迎図三幅対 ⑫阿弥陀来迎図

第5章 峻厳なる悟りへの道 -禅宗の美術
 最後の章には、数多くの書画、頂相(ちんぞう)が展示されている。一番
 注目は⑬、禅問答のような「〇△▢」。これを見て、何を感じるか、どう説明
 するかなど、様々なことが浮かぶ。何を感じたか後で、参加者の皆さんに
 聞いてみようと思った。 
仙厓義梵 作
⑬〇△▢

 仙厓作画賛の中で印象深いものは⑭出山釈迦画賛と⑮十一面観音画賛。
 いずれも、慈悲深さが拝見した瞬間に伝わってきた。仙厓と言う禅僧について
 もっと詳しく知りたいと思った時でもある。 
仙厓義梵作
⑭出山釈迦画賛 ⑮十一面観音画賛

2時間の観覧を終え、昼食は東京駅前の丸ビルへ移動した。グリル満天星で
舌鼓を打った。昼食後は、どなたかのご案内で東京駅舎を眺めながら歓談。
楽しいひと時を過ごさせて頂いた。感謝。(合掌)

丸ビルから東京駅舎を眺める皆さん