2016年11月27日日曜日

花南仏像の会 小田原の古刹を巡る(25日午後)


昼食に海鮮丼を頂いた。会食歓談の後、午後の部をスタート。先ずは宝金剛寺。
小田原で文化財指定の仏像を一番多く所蔵する寺院。今回探訪の中で、一番
見どころ満載の寺と言える。少し、詳しく報告したい。

3.宝金剛寺(ほうこんごうじ)<東寺真言宗> http://hohkongohji.jp/

緩やかな上り坂となった参道を歩き、境内に辿り着くと、ご住職のお出迎えを
受けた。気さくなお人柄に、参加者から笑みがこぼれる。早速、収蔵庫に
ご案内される。
宝金剛寺の縁起             参道
 
ご住職の神谷晴久師は40年間サラリーマンをされ、10年前にご住職
となられたこと、宝金剛寺は東寺の塔頭(たっちゅう)寺院・宝菩提院の
末寺になること、檀家が100軒ほどあることなど、ご自身のことやお寺
のことを最初に話された。
なお、宝菩提院は国宝・如意輪観音半跏像所蔵の宝菩提院(願徳寺)とは違う。
 
収蔵庫には、中央に銅造大日如来坐像、向かって左側に不動明王及び
両童子立像、右側に理源大師 聖宝(りげんだいし しょうぼう)坐像が鎮座。
 
絵葉書の写真
木造 不動明王立像    銅造 大日如来坐像
 
(ネットでの写真)
木造不動明王及び両童子立像    銅造 大日如来坐像
に解説文                  に解説文
 
★銅造大日如来坐像  〔国 重要文化財〕
いよいよ仏像についてのご説明あった。大日如来は、文化財的価値の
高い像であり、東博への出展は勿論、アメリカにも出展されたこともある
そうだ。収蔵庫ができるまでは、鎌倉国宝館に寄託されていたとのこと。
 
平安仏と言われたり、あるいは鎌倉時代前半の作とされたりしている。
いずれにしても、銅造の大日如来としては日本最古の像のようだ。また、
両腕は、肩の部分から差し込むようになっており、左腕を先に外し、
次に右腕の順にしないと外れないようになっている。
全体の造形バランス、お顔立ち共に評判通りに素晴らしい。
 
★不動明王及び両童子立像 〔県指定 文化財〕
不動明王の解体修理時に頭部から仏舎利が出て来たそうだ。仏舎利を
どのように祀るかを検討した結果、元の状態に戻すこととなり、現在も
不動明王の頭部に納められている。
 
★理源大師 聖宝坐像 (画像はない)
収蔵庫に弘法大師 空海ではなく、なぜ理源大師 聖宝が祀られているか?
お寺の縁起を説明した掲示板にもあるように、宝金剛寺の前身は
空海十大弟子の一人、杲隣大徳(ごうりんだいとく)が開いたお寺。
そのお寺を1145年に中興した僧が一海(いっかい)であり、一海が
聖宝を師匠と仰いだことから祀られたとのこと。
なお、聖宝は京都・醍醐寺の開山であり、空海の孫弟子に当たる。
 
収蔵庫を後にして、庫裏へ入り、廊下伝いに本堂へと向かった。
今度は本堂で地蔵菩薩にご対面させて頂く。
収蔵庫から出る皆さん         庫裏へ入る
 
廊下を通り本堂へ向かう      庫裏と直角に位置する本堂
 
本堂に移り、再度ご住職からご説明を受けた。本堂中央には
薬師如来坐像が鎮座されている。しかし、このお寺のご本尊は
地蔵菩薩。ご本尊は薬師如来像の右側に設えた厨子の中に
安置されている。
 
この地蔵菩薩は帯解地蔵(おびとけじぞう)と呼ばれ、子宝に恵まれ、
安産のご利益があると言う。奈良・帯解寺(おびとけでら)のご住職とは
帯解地蔵のご縁で交流が始まり、後日、大学同窓で1年先輩という間柄
であることを知ったそうだ。何とも不思議なご縁を感じさせるお話だ。
 
また、東大寺のお水取りにもご参加されたり、真言院での法要等、東大寺
との繋がりの深さを知った。ご住職の話も一段落し、いよいよ厨子がご開帳
となった。厨子のそばまで歩み寄り、ご本尊の地蔵菩薩を間近で拝観させて
頂いた。
 (絵葉書の写真)
 木造 地蔵菩薩立像   銅造 如意輪観音坐像
 
(ネットでの写真)
地蔵菩薩立像に解説文
 
★木造 地蔵菩薩立像 〔県指定 文化財〕
★銅造 如意輪観音坐像 〔県指定 文化財〕
 藤原時代(894年から約300年)後期のものと思われる像。
一木造、像高49.3㎝。
光背の頂上部に設けられた小部屋の中に如意輪観音坐像が
安置されている。当初、この像は木造と思われていたようだ。
地蔵菩薩修復の際、良く良く調べると、銅造であることが判明した。
8.7㎝の小像ながら実に精緻にできている。
 
地蔵菩薩の光背になぜ如意輪観音菩薩が置かれているのか、
理由が分からないとのお話があった。聖宝と言えば、准胝観音や
如意輪観音を信仰していたことが知られている。
思わず、「聖宝さんは如意輪観音を信仰していました」と口を差し挟むと、
ご住職は「初めて、知りました。聖宝さんの影響ですか」と反応された。
 
★薬師如来坐像 〔市指定 文化財〕 (画像はない)
中興の僧・一海(いっかい)の当時は護摩堂を中心に繁栄していた
そうだ。護摩堂は薬師堂のことであり、その薬師堂の本尊がこの
薬師如来と推測される。時代的には1145年頃、平安末期の作となる。
今後の調査次第で、文化財的価値が更に高くなるのではないだろうか。
 
本堂での拝観を終え、庫裏へ移動した。お茶と和菓子でのおもてなしを
受けた。また、ご住職からご縁の不思議さ・大切さのお話を伺いながら、
楽しいひと時を過ごさせて頂いた。また、ご住職の人脈の広さにも驚く。
奉納された阿弥陀如来立像や絵画
 
歓談した後は、庫裏を背に記念撮影。シャッターは、ご住職の奥様に
お願いした。 
記念撮影          記念撮影時に席を外されていた方々
 
万歳のポーズでいつまでもお見送りされるご住職
 
宝物の魅力、ご住職のお人柄が重なり、大変充実した時間となった。
次に向かうのは最後のお寺、東学寺。

 
4.東学寺(とうがくじ)<臨済宗 建長寺派>
東学寺に到着すると、直ぐに本堂に案内された。堂内に座り、ご住職の
お話に耳を傾けた。ご住職は臨済宗の中で布教師の任を担っており、
各寺院に出向き、説法をされていると言う。「東学禅寺」と言う定期刊行物
の寺報が配られ、ページを追ってご説明された。流石、布教師、ユーモア
溢れる語り口に笑い声が絶えない。
 
東学寺は、鎌倉 建長寺の末寺となる臨済宗のお寺。臨済宗のお寺に
なぜ清凉寺式釈迦如来像が安置されているのだろうか?

東学寺の縁起が書かれた掲示板       東学寺の山門
 
本堂
 
釈迦如来立像の写真と解説文    本堂天井の雲龍図
 
★木造 釈迦如来立像 〔県指定 文化財〕
 4代前のご住職が、像を漆で黒く塗ってしまったため、全体が
暗い感じがしている。現ご住職は、この点が気に入らず、
機会を見て、漆を除去したいと考えているようだ。
誤った修復から元に戻すことで、文化財的価値が一挙に
高くなることはある。
 
清凉寺式釈迦如来がなぜ禅宗寺院にあるのか不思議に思い、
ご住職に質問をした。禅宗寺院にあることは珍しいし、どのような
経緯で東学寺の所蔵となったかも、不明との回答だった。
 
清凉寺式釈迦如来像は、真言律宗を開いた西大寺の叡尊が多く
造像したことが知られている。真言律宗布教の証となっているようだ。
金沢文庫 称名寺や 鎌倉 極楽寺の釈迦如来像が有名であり、
いずれも真言律宗のお寺だ。
 
六地蔵          薬師堂とお前立の薬師如来像
 
境内には、六地蔵や薬師如来像も祀れており、こちらも禅宗寺院とは
違った印象を持つ。
 
小田原市には13件の文化財指定仏像(国、県、市指定)がある。
今回の探訪で、内8件の仏像を拝観できた。これも、竹田会長の
寺院選定と拝観交渉にご尽力された
お蔭と深謝。内容充実の小田原古刹巡りでした。(合掌)
 
 
宝金剛寺
  銅造 大日如来坐像(国指定)、木造 不動明王 両童子像(県指定)
  木造 地蔵菩薩立像(県指定)、銅造 如意輪観音菩薩坐像(県指定)
  木造 薬師如来坐像(市指定)
 
本誓寺
  木造 阿弥陀如来立像 2件 2躯(県指定)
 
東学寺
  木造 釈迦如来立像(県指定)
 
 
 
 

2016年11月25日金曜日

花南仏像の会 小田原の古刹を巡る(25日午前)


小平『花南仏像の会』主催、小田原探訪バスツアーに参加させて頂いた。
今回が3度目の参加。前日は54年ぶりとなる11月降雪。今日は打って
変わって快晴の行楽日和。

7時、花小金井駅そばのピーコック前に集合。20名のご参加。今回の
参詣は4ヵ寺。午前中は「五百羅漢像」の玉宝寺と「歯吹阿弥陀如来像」
の本誓寺、午後は「文化財仏像を数多く所蔵」の宝金剛寺と
「清凉寺釈迦如来立像」の東学寺を巡る行程となっている。

富士の雄姿を右に、左に、正面に捉えながら、バスは一路小田原へと
向かった。
バスのフロントガラスから見える富士山
 
1.玉宝寺(ぎょくほうじ)<曹洞宗>
 
本堂へ上がり、自由に拝観させて頂いた。木造の小さな羅漢像が堂内を
埋め尽くすように並んだ姿は壮観。須弥壇には本尊の釈迦如来坐像に
左脇侍・迦葉尊者と右脇侍・阿難尊者が鎮座される。更に、後方に
文殊菩薩、普賢菩薩の両脇時も配する形になっていた。
二組の脇侍を並べるのは珍しいのではないだろうか。
 
また、本尊の前に小ぶりの十一面観音坐像も安置されていた。
お寺の略縁起を見るとこちらの十一面観音像もご本尊となっている。
 
五百羅漢像は1730年から1757年の期間、檀家の添田智鉄、真澄兄弟
によって造立、像高は立像で36~60㎝、坐像で20㎝とのこと。
玉宝寺の縁起            山門

須弥壇のご本尊と両脇時         五百羅漢像
 
2.本誓寺(ほんせいじ)<浄土宗>
 
ご住職の案内で本堂に通され、歯吹阿弥陀像について解説して頂いた。
仏さま、檀信徒のためのお寺であることを最優先され、観光化されることを
望んでいないようだ。
 
須弥壇中央にご本尊の阿弥陀如来立像、左脇侍に蓮台を捧げ持つ観音菩薩
立像、右脇侍に合掌する勢至菩薩が三尊像で祀られていた。また、ご本尊の
左脇檀(向かって右側)にも三尊像として、阿弥陀如来立像、左に善導大師像、
右に法然上人像が安置されている。
(法然は浄土宗の開祖、善導は法然の師となる中国僧)
 
本尊の阿弥陀如来像は13世紀中頃、脇の阿弥陀如来像は13世紀後半の
造立、像高は本尊阿弥陀78.0㎝、脇阿弥陀80.7㎝。
 
両阿弥陀如来とも「歯吹」として半開きの口をしている。「南無阿弥陀仏」と
言われたことに「はい」と返事をしているとの説明があった。また、歯を白く
見せるために、鹿の歯で造像されたとも言われているそうだ(真偽は不明)。
ご住職は御朱印帳への揮毫のため、退席され、代わって奥様が、対応された。
 
興味を引いたこととして、善導大師像が下半身のみ金色に輝いた姿をされて
いた。理由は、半分が仏の姿となったことを示していると、ご住職の奥様から
説明があった。
 
絵ハガキはありませんかと尋ねると、そのようなものは方針としてしない旨の
ご回答と同時、堂内に置かれた歯吹阿弥陀像の写真撮影が許可された。
本誓寺の本堂 
本堂の前には、観音像。そばには、なぜかゴジラの像も置かれている。

本堂に置かれた歯吹阿弥陀の写真
 
山門を出て振り返って見る本堂
 
後半の宝金剛寺、東学寺は改めて報告。
 
 
 

2016年11月18日金曜日

学習会は中島憲子さんがご発表される「鉄仏」


11月の定例会には23名が集合。久方ぶりにロの字型に配席。最初に、
先月観覧した「瑞巌寺と伊達政宗 展」についての感想を伺った。参加者が
少なかったせいか、感想を伺うよりも再度、見どころをお伝えすることとなった。

近況報告では、朝比奈さんが懇意にされている工房でのミニ展覧会開催など
の報告がなされた。最新作の愛染明王像始め、バレリーナ像など13体を
展示され、大勢のご来場があった。正に仏像を通じて、地域交流を推進された。

「特別展」情報として金沢文庫の「忍性展」を、お知らせした。
清凉寺式釈迦如来像が2体出陳。極楽寺像と称名寺像との比較ができる。
転法輪印釈迦如来も素晴らしい。また、十大弟子像も、極楽寺像、称名寺像
の出展があり、比較が面白い。必見の展覧会である旨、伝えた。
定例会に参加の皆さん       ミニ展覧会を報告する朝比奈さん
 
本日のメインは中島さんの「鉄仏」解説。最初に準備されたレジュメを
読み上げられた。コンパクトに良くまとめられた資料と感心する。
「鉄仏」の解説をされる中島さん
 
1.「鉄仏」の歴史や現状について
  中国では隋、唐、宋の時代に盛んに造られた。日本では鎌倉から室町に
  かけて最も多く造られた。最も古い鉄仏は栃木県の薬師如来、1218年
  作と、はっきりしているようだ。
 
2.鉄仏がなぜ造られたのか?
  ①銅より安く、代用品として使用された。 ②銅より強いという材質への
    信頼感。
  ③鉄仏が分布している地域は、鋳物が盛んな場所であり、鋳物師集団
    が居住していたから ④鉄の荒々しい質感や恒久性が、質実剛健な
    武士の好みにあったなどが挙げられる。
 
3.仏像の種類として
   阿弥陀如来像(22躯)、薬師如来像(7躯)、地蔵菩薩像(13躯)、
   観音菩薩像(10躯)、不動明王像(5躯)、その他(12躯)
  
地蔵菩薩像13躯の内、12躯が愛知県となっており、なぜ愛知なのだろくか
との疑問も出ていた。愛知県は全国一お寺の多い県であり、色んな仏像も
多いのだろうか?
 
一般に鉄は銅に比べ、鋳造が難しいようだ。鉄に詳しい西さんから補足説明
があった。鉄の融点は高い一方、固まる温度が融点の割には低く幅がある
そうだ。
そのため、ひび割れが、し易くなるとのこと。造像する上では、厄介であり、
繊細な作業が難しいのではないだろうかと想像した。
 
レジュメでの解説の後、スライドを視聴した。

 
 

今月3日には府中本町の善明寺(ぜんみょうじ)で鉄仏の阿弥陀如来坐像を
拝観したばかりだ。年1回のご開帳に伺った。荒削りの造作であり、鉄仏なら
ではの良さもあるように思えていた。今回の解説を聴いて、また関心が更に
高まったように感じる。
 
 
 
 
 
 
 
 

2016年11月17日木曜日

阿佐谷地域区民センター主催「仏像講座」2日目内容


本日(講座2日目)の講座では鎌倉の仏像をご紹介した。
鎌倉市内の寺社には国の重要文化財指定を受けている仏像が38件
所蔵されている。

紹介のポイントはエリア毎、重文仏像の所蔵件数、霊場札所の状況を
加味して、選んだ。

エリアは北鎌倉、鶴岡八幡宮近辺、二階堂十二所、長谷のエリアを
取り上げた。時間の制約で12寺院に絞って解説した。
本日のテーマ・内容        重文仏像・霊場札所

 
紹介の寺院と仏像 
 円覚寺             東慶寺
 
浄智寺              建長寺

円応寺              英勝寺
 
浄光明寺             宝戒寺
 
覚園寺             杉本寺
 
 光触寺              極楽寺

95歳のお母様とご一緒にご参加の方から「毎回、楽しみにしています」と
大変嬉しいお言葉を頂く。有難い。