小平 花南仏像の会主催「仏像探訪バスツアー」に参加させて頂く。
朝7時半、花小金井駅南口、ピーコック前に19名集合。
好天にも恵まれる。探訪寺院の見どころは竹田会長が、
予めレジュメにまとめ、配布されていた。
探訪のスケジュールは
①稲城市・常楽寺(天台宗)、
②八王子市・清鏡寺(曹洞宗)、
③八王子市郷土資料館、
④八王子市・極楽寺(浄土宗)。
最初の参詣寺院は稲城市にある常楽寺。天台宗の古刹で、
見どころは阿弥陀三尊像。
市内で最も古い仏像であり、東京都指定文化財となっている。
制作年代は平安末期、12世紀前半頃。藤原時代の特色として、
伏し目の穏やかな表情を確認したいところだ。
楼門となった山門が、目に飛び込んでくる。仁王の前に四天王が
陣取っている様式も珍しい。更に、仁王の裏側(背中合わせに)
文殊菩薩と普賢菩薩も安置されている。
境内の至る所に、仏像が鎮座している。これだけ祀るとは、
さぞや篤志家の檀信徒が大勢いることだろうと想像する。
山門
阿弥陀三尊像 中尊 阿弥陀如来坐像
中尊は78.4cm、両脇侍は約92cmと小ぶり。実際は数字以上に
大きく感じられた。中尊の頬辺りに漆箔の形跡が見られる。
来迎印であり、平安末期に流行の印相。
荘厳(しょうごん)は極楽を思わせる程のきらびやか。
一方、三尊像の右手には閻魔王と奪衣婆(だつえば)と
言う地獄の裁判官とアシスタントが鎮座している。
境内で目に付く像は天台宗の開祖、伝教大師・最澄像。
像の台座に「瞻仰崇信」と書かれている。読み方も、
意味も良く分からない。後で、調べてみて分かった。
「せんぎょうすうしん」と呼ぶ。
「仰ぎ見て、敬い慕い、そして尊び信じること」の意味とのこと。
解説に「草木や山河も人間と同じくらい大切で皆平等。
命あるものは皆、自分以外の命によって生かされていると言う教え」と
ある。何と深い言葉か。
閻魔王と奪衣婆 伝教大師・最澄
本堂や鐘楼の周囲にも石仏像や羅漢像で一杯
次に向かった先は八王子市の清鏡寺。このお寺の見どころは
東京都指定文化財の十一面観音像。鎌倉期の優作と言われている。
坂を上がっていくと、「南無観世音菩薩」の幟旗が参道の両端に
ずらっと並んでいる。ご住職に出向かえて頂き、お堂に入る。
参道に並ぶ幟旗 観音堂に入る皆さん
ご住職からお寺の縁起などを細かくお聴きした。
今から800年程前に、小さな祠を建て、信者が講を作り
観音像を祀って来たとのこと。440年頃に観音堂が建立された。
一方、曹洞宗の清鏡寺がこの地に移り、近世になって
観音堂が清鏡寺の管轄下に置かれるようになったようだ。
「御手の観音様」はご本尊の千手観音像のことであり、
十一面観音像のことでない。
私自身、文化財の十一面観音像と勘違いをしており、
ご住職の解説を聴くまで誤解していた。
十一面観音像が文化財に指定されることにより、
鉄扉の収蔵庫に納められることとなり、ご本尊も同じ収蔵庫に
安置するようになったそうだ。
十一面観音像は近年修復され、金色に輝いていた。
像高90cmの小ぶりの立像でお顔立ちも良く、均整のとれた体躯だ。
ご本尊の千手観音像は、坐像で真数千手。
大阪・葛井寺の千手観音を思い起こす。
ご住職のお話では専門家が何度数えても980本とのこと。
「御手の観音」の「御手(おて)」とは千手のことと知る。
十一面観音立像 千手観音坐像(本堂に置かれた写真)
須弥壇にはご本尊とは別の観音像
興味深い話は、「廻り観音」。厨子に入った観音像を背負って、
講(信者)へ出向いたそうだ。正に出開帳。仏さまが出向いてくれるとは、
どれ程有難く感じた事だろうか。
厨子の中には中央に千手観音像、向かって右が不動明王像、左が毘沙門天像。
強面の明王と天部が観音さまをガードする配置となっている。
厨子に入った廻り観音 観音堂は格天井に絵が描かれている
ご住職のご案内で本堂の中も見学する。本堂は農家の家屋を
そのまま本堂として活用されている。外観も、家の中も農家そのまま。
こういうお寺はかえって、親しみを感じる。
本堂の入り口が土間となっている。須弥壇には
ご本尊・釈迦牟尼仏が安置されている。
また、農家のような本堂のガラス戸に北条氏の家紋である
三つ鱗があるのも、不思議な歴史を感じる。
本堂の外観 本堂内の様子
本堂 内陣
客仏の十一面観音像が都指定文化財となり、保護のために鉄扉で
保管できる収蔵庫が設置され、ご本尊の千手観音像も居候のように
安置される。
礼拝としての「ほとけ」と文化財としての仏像を考えた時に、
そのバランスをどのように取るかは難しい。
「ほとけ」として礼拝するには、やはり荘厳された須弥壇に
鎮座する姿を拝観したいと思う。
然しながら、受け継ぐ文化遺産と考えた場合、保存が優先
されるようにも思える。何とかならないものか。
残りの探訪報告は、後日にさせて頂く。
0 件のコメント:
コメントを投稿