2019年6月7日金曜日

三井記念美術館「円覚寺の至宝展」観覧


5月11日(土)、23日(木)の2回、「円覚寺の至宝展」を
観覧した。本展覧会は江戸時代の大用(だいゆう)国師没後200年、
明治時代の釈宗演(しゃくそうえん)老師没後100年を記念し、
開催されている。二人とも、円覚寺興隆に功績のあるお坊さん。

展覧会場に掲示の看板(①)には開山・無学祖元(むがくそげん)
坐像と山門の写真が映っている。円覚寺の境内は、縦一列に並ぶ
伽藍と多くの塔頭寺院がある。(②)

①館内に掲示の看板    ②円覚寺境内伽藍と塔頭

鎌倉仏像の特徴と言えば「宝冠釈迦如来」「法衣垂下(ほうえすいか)」
「土紋(どもん)」と「頂相(ちんそう)彫刻」などが挙げられる。

1.宝冠釈迦如来像(③)
  宝冠を被り、菩薩像のような釈迦如来像は、毘盧遮那仏と同じ
  存在のようだ。釈迦如来は、三身説において、応身(おうじん)。
  この世で悟り、人々の前に現れた仏を意味する。

  一方、宝冠釈迦如来は「法身(ほっしん)」、宇宙の真理そのもの
  となる。大日如来も法身仏。大日如来が菩薩のように飾っている
  ことと同じ。いわば、如来の中の如来、キング オブ キングか。
  三身説のあと一つは報身(ほうじん)。誓願を立て、修行の結果
  成仏した阿弥陀如来や薬師如来のこと。

  通常、釈迦如来像であれば、脇侍は文殊菩薩と普賢菩薩もしくは
  迦葉と阿難となる。禅宗寺院の場合は後者が多いように思う。
  円覚寺仏殿の宝冠釈迦如来の場合、④の通り、梵天と帝釈天が
  本尊脇侍となっている。これも、通常の釈迦如来とは違う。
③塔頭の宝冠釈迦如来坐像 ④本尊脇侍 梵天立像・帝釈天立像

  禅宗寺院では開祖や開山の尊像が多く造られ、祀られている。
  また、観音菩薩、地蔵菩薩と言った、庶民信仰の仏像も多い。
  (⑤、⑥)
⑤達磨大師坐像(仏殿) ⑥観音・地蔵菩薩立像(開山堂)

2.頂相(ちんそう)
  頂相とは禅僧の肖像画や肖像彫刻のことを言う。今回の見どころ
  の一つが、頂相。お寺を参詣しても、普段お目にかかれない像が
  展示されている。

  建長寺開山の蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)、円覚寺開山の
  無学祖元(⑦)は中国から来られた禅僧。無学祖元の弟子・
  高峰顕日(こうほうけんにち)、高峰顕日の弟子・夢窓疎石
  (むそうそせき)(⑧)は共に日本人の禅僧。

  いずれの禅僧も、今にも口を開き、語りかけて来るような表情を
  している。俳人の長谷川櫂氏が頂相と対面した時の感想を記事に
  されている。(⑨)

  「生身の禅僧たちの顔はみな苦悩の表情をたたえていた。(中略)
   全宇宙でもっとも悩み、苦しんでいるのが私であるかのように。」
⑦蘭渓道隆坐像、無学祖元坐像  ⑧高峰顕日坐像、夢窓疎石坐像

⑨長谷川櫂氏の寄稿記事

3.観音菩薩像、地蔵菩薩像、阿弥陀三尊像、伽藍神
  観音菩薩像(⑩)、地蔵菩薩像(⑪、⑫)の展示も多い。
  東慶寺の観音菩薩立像は、尼寺・太平寺(廃寺)の本尊。
  土紋の貼られた衣が目に付く。

  遊戯坐(ゆげざ)二体の観音菩薩は対比が興味深い。
  南宋からの請来像、横須賀市清雲寺の滝見観音菩薩遊戯坐像
  は、右足を立膝にして座る。

  一方、松ヶ岡文庫像は右足を寝かせ、半跏踏み下げとなって
  いる。こちらの方が女性的で、穏やかな感じがする。

  仏日庵・地蔵菩薩坐像の法衣垂下、伝宗庵像の土紋は、鎌倉
  らしい特徴を備えている。
⑩観音菩薩像       ⑪地蔵菩薩坐像

  浄智寺の地蔵菩薩坐像(⑫)は、京都・六波羅蜜寺、運慶作の
  地蔵菩薩坐像(夢見地蔵)と似ていると言われる。確かに、
  見比べると、同じような顔立ちをしている。
  
  一光三尊形式の阿弥陀如来及び両脇侍像(⑫)は善光寺式の
  三尊像。善光寺の秘仏本尊の模造か? 中尊の螺髪部分は
  外せる構造になっている。銅造であり、小像ながら重厚感と
  精緻さを感じる。

  ⑬の韋駄天立像、伽藍神像も禅宗寺院で良く見る仏像であり、
  守護神として、決まった堂宇に祀られる。韋駄天立像の土紋
  と伽藍神の目が印象深い。
⑫地蔵菩薩坐像、阿弥陀三尊立像 ⑬韋駄天立像、伽藍神坐像

  鎌倉には「鎌倉三十三観音霊場」「鎌倉二十四地蔵尊霊場」や
  「六阿弥陀霊場」がある。

  長谷寺の本尊は十一面観音、建長寺の本尊は地蔵菩薩であり、
  鎌倉の大仏は高徳院の本尊・阿弥陀如来である。今回の展覧会
  に、観音や地蔵が多い理由が分かる。

  三井記念美術館の展覧会はいつも楽しませてくれる。今回も
  期待通りの展覧会で満足‼




0 件のコメント:

コメントを投稿