7月13日(土)東博「奈良大和四寺のみほとけ展」を観覧した。
総勢21名で訪れた。個人的には今回が3度目の訪問となる。
本館11室の展示であり、満70歳以上は無料となっている。
見どころは室生寺の国宝仏像2体。PRチラシ(❶)に掲載の
釈迦如来坐像と十一面観音菩薩立像が注目の的となっている。
土門拳、入江泰吉、小川光三、三好和義と著名の写真家が挙って
撮影した名品。
❶特別企画展PRチラシ
四寺の所在地やご本尊は❷、❸の通り。奈良県の北東部に位置し、
飛鳥時代には政治の中心地「ヤマト」と呼ばれたエリアに当たる。
岡寺を除く三寺は、複数回訪れたことがある馴染みの寺院。
四寺とも創建にまつわる物語を持つ古刹である。いずれも神聖な
山間に建つ格式の高い寺院。ご本尊は、なぜか皆、巨大な像。
(像高、総高は❸に表示)
❷四寺の所在地・宗派 ❸四寺のご本尊
展示作品の件数はわずかに15件。内訳は❹の通り。展示室の作品
配置図(❺)を手許にし、番号順に観覧した。15件中、国宝が4件、
重文が9件と文化財的価値の高い作品が多い。
❻長谷寺・十一面観音菩薩
長谷寺のもう一体、十一面観音菩薩立像と阿弥陀如来立像(❼)
は、いずれも穏やかな雰囲気を醸し出している。造形的に好き
な仏像に入る。❻と❼の十一面観音を比較しながら眺めるのも
面白い。いずれも長谷寺式十一面観音となっている。定朝様の
阿弥陀如来は、仏様らしい仏で気に入っている。
岡寺の像(❽)では、菩薩半跏像が、ご本尊の胎内から発見
されたとの言い伝えが興味深い。天人文甎(てんにんもんせん)
は、何のため、どのように制作されたか想像を巡らす。
釈迦涅槃像は日頃、見かけないだけに、まじまじと眺めた。
❼長谷寺・十一面観音菩 ❽岡寺・菩薩半跏像
/阿弥陀如来 /天人文甎/釈迦涅槃像
いよいよ、国宝の仏像(❾)とご対面する。岡寺の義演僧正坐像は
八の字の眉、垂れ目の顔立ちは、穏やかな精神を感じさせる。指先
に、木心乾漆造の精緻さが表れていた。
室生寺の釈迦如来坐像は、いろんな角度から眺めた。土門拳が絶賛
する「日本一の美男子」はどこから見ても、美しい。翻波式衣文
(ほんぱしきえもん)と両手の曼網相(まんもうそう)が目に付く。
反対側には長谷寺の像3体(❿)が並ぶ。地蔵菩薩は錫杖を持って
いない。「論議地蔵」呼ばれ、長谷寺の学僧に信仰されたそうだ。
雨宝童子、難陀龍王は共に雨を司どる神。これだけ彩色も残り、
印象的な造形の両像が、長谷寺ではご本尊の影に隠れ、うっかり
見落とす。
❾岡寺・義演僧正坐像/ ❿長谷寺・地蔵菩薩立像
室生寺・釈迦如来坐像 /雨宝童子/難陀龍王
展示室正面の壇には、室生寺金堂の像が4体並んでいる。室生寺
金堂は⓫⓬のように、仏像が配置されている。
室生寺の信仰として小川光三氏が次のようにコメントしている。
『奈良時代の末期、この幽邃な山地で山部親王(後の桓武天皇)
病気平癒の延寿法が行われ、これに卓効のあったことから国家
のために建立されたのが室生寺で、金堂は古くは根本堂と云い、
本尊として東方薬師瑠璃光如来像(近世になって釈迦如来と
される)を安置、脇侍に十一面観音像と地蔵菩薩像を置くと
いう三尊形式であった。これを現在のような五尊にしたのは
近世のことであるが、・・・』
⓫室生寺金堂 仏像配置図
⓬室生寺金堂 諸尊像 ⓭室生寺・十二神将立像
十二神将像(巳神像、酉神像)は像高約1mの立像(⓭)。特に
巳神像のポーズは何となくユーモラス。眩しくて手をかざすのか、
遠方を眺めるポーズなのか? 守護神だけに、見張りをしている
姿と思う。
本展示の一番は、十一面観音菩薩立像(⓮)。会津八一の短歌に
「うるわしく ほとけいまして、むなだまも ただまもゆらに
みちゆかすごと」とある。乙女の麗しさを感じさせる像だ。
横から眺めると、腰部のボリュームや腕の太さなど意外と逞しい。
十一面観音菩薩と対に並ぶのが地蔵菩薩立像(⓮)。この地蔵は、
光背と合っていない。十一面観音菩薩像の尊顔が光背の円中央に
位置するのに比し、地蔵菩薩の場合は、円中央よりずっと低い
位置にある(⓯)。この光背にぴったり合うのが室生寺の近くに
ある安産寺の地蔵菩薩像と言われている(⓯)。
⓮室生寺・十一面観音菩薩 ⓯地蔵菩薩の光背
/地蔵菩薩
最後に、安倍文殊院・文殊菩薩像の像内納入品を眺めた。納入品
そのものより、快慶が制作した文殊菩薩像の像内に納められていた
と言う事に関心が高まる。
⓰安倍文殊院・文殊菩薩
像内納入品
ゆっくり観覧した後は、折角の機会であり、本館2階の展示物
も観覧した。更には、中華料理店で昼食を取りながら歓談した。
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