何気なく話している日常語に仏教(仏像)に由来することばが
数多くある。好むと好まざるに関わらず、日本語が仏教の影響
をいかに受けていたかを物語る。
「迷惑」「邪魔」、「我慢」「頑張る」、「挨拶」「玄関」、
「出世」「一大事」、「言語道断」「道楽」などのことばも
仏教由来のようだ。しかし、本来の仏教語とは違った意味で
使用されていることも多い。
仏教語本来の意味を知ることで、使い古した日常語に新たな
命が吹き込まれる思いがする。仏教的考え方や価値観を言い
表すことばとして蘇る。
今回取り上げることばは『空(そら)で覚える』。
上記「迷惑」以下のことばは、別の機会に論じる。
1.『空(そら)で覚える』の「空(そら)」とは何か?
物事を暗記することであり、「空(そら)んじる」とも
言う。「そら」とは虚空蔵菩薩から転じたものとのこと。
2.虚空蔵菩薩とはどんな仏か?
虚空蔵菩薩が信仰を集めた最大の要素は人間的な「知恵」
とくに「記憶」と言われている。そこで、虚空蔵菩薩が
仏教的にどのような存在かを見て行きたい。
3.虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)の主尊
この修法は空海が入唐前に修したことであまりにも有名
となっている(❶)。短期間で、密教の奥義を修得した
のも、虚空蔵菩薩の功徳か。
❶虚空蔵菩薩と虚空蔵求聞持法
4.胎蔵界曼荼羅の中の虚空蔵菩薩(❷、❸)
胎蔵界曼荼羅は、大日如来のエネルギー(智慧と慈悲)が
遍満している世界を表現している。智慧は金剛蔵王菩薩など、
慈悲は千手観音菩薩などへと分有されて行く。
(智慧とは仏の知恵。)
虚空蔵菩薩は両者のエネルギーが集中する存在としてある。
正に、智慧、慈悲、福徳(現世利益)の仏として位置づけ
されている。大日如来を功徳を備えていると言える。
❷胎蔵界曼荼羅の諸尊 ❸虚空蔵菩薩の功徳
5.信仰の虚空蔵菩薩
虚空蔵菩薩の信仰面を「❹虚空蔵菩薩の特性」として
まとめてみた。地蔵菩薩との対比は古くからあった概念
のようだ。寛永寺・両大師阿弥陀堂に二尊像が安置されて
いるのを拝観した(❻)
十二支守り本尊と十三仏(❺)、十三詣り、十三日の縁日
など庶民信仰をまとめた。「十三」が虚空蔵菩薩と縁のある
数字のようだ。
「明けの明星(金星)」は、空海が虚空蔵求聞持法を修して
いる時に、口から体内に迎えるという超常現象を経て、修行
を完遂した。<高知県室戸岬の御厨人窟(みくろど)>
❹虚空蔵菩薩の特性 ❺十二支の守り本尊など
❻寛永寺・両大師 阿弥陀堂
『空で覚える』から始まり、虚空蔵菩薩について論じた。
観音菩薩や地蔵菩薩が人気なの比し、虚空蔵菩薩は、
あまり知られていない。丑年生まれの筆者にとって、
守り本尊ということもあり、少しPRさせて頂いた。
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