2020年8月23日日曜日

中尊と脇侍・眷属<阿弥陀如来グループ>Ⅰ


1.阿弥陀如来(阿弥陀仏)の尊名
 仏教語で一番良く口にしたことばは「ナミアミダブツ」では
 ないだろうか。こどもの頃、困った時、救済を求める時など
 意味も分からず、呪文のように唱えたりした。

 「ナムアミダブツ」が「南無阿弥陀仏」と知るのは、仏教に
 多少、興味を持つようになってからだ。念仏とは仏の姿や功徳
 を思い描くこと。この時の仏は直ぐに阿弥陀仏と結びつく。
 大師と言えば弘法大師、太閤は秀吉、念仏は阿弥陀仏となる。

 阿弥陀仏は、梵語の「a.アミターバ」「b.アミタ―ユス」
 の音写。「アミタ―」は、「はかりしれない」「無量の」と
 いう意味。

 意訳すると「aはかりしれない光を持つ者」即ち「無量光仏」、
 「bはかりしれない寿命を持つ者」即ち「無量寿仏」となる。
 文字通り、絶え間なく慈悲の光を降り注ぎ、永遠の命を持つ
 仏と言えるのでないだろうか?

2.阿弥陀如来像の国宝指定件数は12ヵ寺、12件(❶)
 阿弥陀如来の脇侍・眷属を見る前に、国宝の阿弥陀如来像を
 確認しておきたい。国宝12件の内訳は、独尊像での指定が
 5件、三尊像が5件。

 残り2件は、浄瑠璃寺像が9軀まとめて1件、中尊寺の場合、
 金色堂内の仏像32躯まとめて1件の国宝指定となっている。

 最古の阿弥陀如来像は、法隆寺大宝蔵院の伝・橘夫人念持仏
 の阿弥陀三尊像(白鳳時代)、最新は鎌倉大仏として有名な
 高徳院の阿弥陀如来坐像になる。両尊像とも銅造。
❶国宝阿弥陀如来像 一覧

3.阿弥陀三尊像の構成(❷)
 阿弥陀如来像を中尊にして、左脇侍に観音菩薩、右脇侍に
 勢至菩薩となるのが一般的。配置が逆になることも稀にある。
 観音菩薩が慈悲の象徴であり、勢至菩薩が智慧の象徴となる。

 観音菩薩が独尊で祀られることも多いのに比し、勢至菩薩を
 独尊で見かけることは十二支守り本尊(これも独尊とは言い
 難いが)くらいで、それ以外はあまりお目に掛らない。
 ちょっと気の毒な存在となっている。 
❷京都・清凉寺 阿弥陀三尊像

4.観音菩薩と勢至菩薩の特徴、見分け方(❸、❹)
 観音、勢至を見分ける方法の一つに、頭上宝冠に付いた標識がある。
 観音菩薩には化仏(けぶつ)、勢至菩薩には水瓶(すいびょう)が
 付いている。

❸清凉寺阿弥陀三尊の脇侍  ❹奈良・法隆寺 阿弥陀三尊像

5.阿弥陀如来と眷属
 A.京都・平等院鳳凰堂 雲中供養菩薩(❺)
  阿弥陀如来の周りに雲中供養菩薩が雲に乗って飛んでいる。楽器を
  奏でる者や、舞う者、僧形姿の者など、阿弥陀如来と共に来迎する
  菩薩を表したとされている。
 
  雲中供養菩薩像は本尊と同時期の制作であり、現存するのは52躯。
  鳳凰堂の壁面を飾るのは半数であり、残りの半数はミュージアムに
  移されている。阿弥陀如来坐像とは別に、この52躯で国宝の指定
  を受けている。

  なお、平等院は藤原道長の別荘「宇治殿」を息子の頼道が寺院に
  改めたもの。ご本尊の阿弥陀如来坐像は大仏師・定朝の作。
❺京都・平等院 阿弥陀如来像
と雲中供養菩薩
 
 B.京都・即成院(そくじょういん) 二十五菩薩像(❻、❼)
  即成院は泉涌寺の塔頭寺院。創建は藤原頼道の息子、橘俊綱。
  観音菩薩、勢至菩薩を含め、二十五菩薩が阿弥陀如来と共に
  現れ、亡者を極楽浄土へ導く様子が再現されている。

  観音菩薩は蓮台を捧げ持ち、勢至菩薩は合掌している。来迎
  する時の観音、勢至はいつも、このような形で表される。
  また、二十五菩薩の尊名には、薬王菩薩、薬上菩薩、普賢菩薩
  虚空蔵菩薩など、良く目にする菩薩も含まれている。
❻京都・即成院 阿弥陀像   ❼同左・二十五菩薩像名
         と二十五菩薩像

 C.岩手・中尊寺金色堂(❽、❾)
  中尊寺金色堂には、阿弥陀三尊像が3つの壇、それぞれに安置
  されている。三尊像の両側に、六地蔵が3体ずつ並び、前には、
  持国天、増長天の二天像が立つ。

  一つの壇には、阿弥陀三尊像、六地蔵像、二天像と合計11軀
  が安置されている。右壇(西南壇)は増長天を欠くため、合計
  32躯となる。(11軀×3檀-1軀=32躯)

  各檀の尊像は、初代清衡から二代基衡、三代秀衡へと約30年
  毎に、造立されていったようだ。阿弥陀三尊だけでなく、地蔵
  菩薩も加えて、二重に救いを求めている。何と念の入れよう
  だろうか。

  現在の仏像配置(❾)は、像の作風や材質、技法などから見て、
  造立当初の配置と相違しているとのこと。中央壇阿弥陀三尊像
  と西北檀六地蔵像、二天像が一具であり、他の檀でも入れ替わ
  りがあるようだ。

❽岩手・中尊寺 金色堂   ❾金色堂内 仏像配置図

6.九体阿弥陀像
 A.京都・浄瑠璃寺(❿)
  阿弥陀如来像を9体安置することを盛んに行った時代がある。
  「観無量寿経」に説く「九品往生(くほんおうじょう)」の考え
  に基づくものであり、藤原道長も建立するなど、記録に残るもの
  が多数ある。

  しかし、平安時代の造立で、現存する九体阿弥陀像は、浄瑠璃寺
  安置の像だけとなっている。中尊像は大きく、来迎印を結び、他
  の8体は同じ形の定印となっている。

  浄瑠璃寺は寺名の通り、東方瑠璃光浄土(浄瑠璃世界)の教主、
  薬師如来が本尊であった。今は、西方極楽浄土の阿弥陀如来が
  本尊となっている。

  現世の苦しみを取り除く薬師如来の住む世界を此岸(しがん)、
  来世の極楽を彼岸(ひがん)とする浄土式庭園が、より一層
  九体阿弥陀の存在を際立させている。
  
❿京都・浄瑠璃寺 九体阿弥陀像
と浄土式庭園

 B.東京・九品仏浄真寺(⓫、⓬)
  九体の阿弥陀如来像が鎮座されるお寺として、東京・世田谷区
  の九品仏浄真寺がある。お寺の創建、九品仏の造立は江戸時代
  と新しい。本尊の釈迦如来像と九品仏の阿弥陀如来像はいずれも
  丈六であり、見応えがある。

  三仏堂の総称で3つのお堂が並んでいる。中央の上品堂(じょう
  ぼんどう)を挟み、向って右側に中品堂(ちゅうぼんどう)、
  左側に下品堂(げぼんどう)の配置となっている。

  それぞれのお堂に、3体の阿弥陀如来像が横一列に鎮座される。
  上品堂で言えば、中央が上品上生(じょうぼんじょうしょう)、
  向かって右側が上品中生(じょうぼんちゅうしょう)、左側が
  上品下生(じょうぼんげしょう)の印相を結ぶ。

  生前の信心深さや、善行によって、極楽往生の仕方に差が出る
  としている。一方、どんな人でも極楽往生できるとする教えで
  ある。努力を強いるだけでなく、セイフティネットがあることで
  安心感が生れて来る。

  浄真寺では、3年に一度「お面被り」と呼ばれる「二十五菩薩
  来迎会」が開催される。阿弥陀如来が二十伍菩薩を引き連れ、
  亡くなった人をお迎えに来てくれる法要のことを言う。三仏堂
  が彼岸になり、釈迦如来の鎮座する本堂が此岸となる。

  6年前の8月に、お面被りに出演した仲間の様子を見学したこと
  がある。阿弥陀如来と二十五菩薩の来迎を体験したかったとの
  ことだ。臨終の体験は、死の恐怖を和らげることに繋がる。
  
  コロナの時代となって、新しい臨終の儀式が求められている
  ように感じられる。
⓫東京・九品仏浄真寺     ⓬同左・九品往生印

次回は、阿弥陀三尊像における姿勢の変化や阿弥陀如来像の印相変化
についてまとめたい。

【中尊・脇侍・眷属シリーズ 続く】



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