2018年10月16日火曜日

サントリー美術館 京都・醍醐寺「真言密教の宇宙」観覧‼


10月13日(土)荻窪の仏像グループメンバー、総勢20名が
サントリー美術館に集合。

この秋は仏教美術の特別展が花盛り。(10月13日 現在で)
・サントリー美術館→『京都・醍醐寺 真言密教の宇宙』
・東京国立博物館→『京都大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ』
・三井記念美術館→『仏像の姿(かたち)~微笑む・飾る・踊る~』
・出光美術館→『仙厓礼賛』
・五島美術館→『禅宗の美術と学芸』
・泉屋博古館分館→『狩野芳崖と四天王』
サントリー美術館      展覧会チラシ

10時の開館を待って、入館すると最初に目に入るのは、ポスター、
チラシ、図録の表紙を飾る如意輪観音坐像(❶)。想像していたより
小ぶりの像で、像高が49cm。観心寺像とともに、日本を代表する
作例。穏やかで、ゆったりした気分にさせてくれる美しい観音さまだ。
(掲載の画像は図録から)
❶(重文)如意輪観音坐像

次に、注目したのが「聖宝(しょうぼう)坐像」(❷)。醍醐寺を
開山した人物はどんなお顔をしていたか、興味深い。四角い顔立ちは
いかにも強靭な意志を感じさせる。

聖宝が笠取山にお堂を建てて、准胝観音と如意輪観音(❸)を安置
したことが醍醐寺の起源とされる。(向って左が准胝、右が如意輪)
その後、両観音を本地仏とする清瀧権現(せいりゅうごんげん)が
笠取山の守護神とされた。

清瀧権現は、中国長安の青龍寺にいたが、空海が帰国する時に共に
笠取山に来たという。それを聖宝が感得して守護神となった。空海と
聖宝、清瀧権現と准胝・如意輪観音、それぞれの因縁を理解した。

           ❷聖宝坐像     ❸清瀧本地両尊像

空海像(❹)は、良く目にする姿形。右手に五鈷杵、左手に念珠。
顔を少し横に向ける。空海十大弟子の一人、真如法親王(しんにょ
ほっしんのう)が描いたとされる根本像と同じ様式となっている。
その様式を「真如様(しんにょよう)」と呼ぶ。真如法親王は、
第51代・平城天皇の皇子、出家前の名は高岳(たかおか)親王。

狸毛筆奉献表(りもうひつほうけんひょう)(❺)は、空海が、
第52代・嵯峨天皇へ筆四本を製作し、献上した際の上表文。
三筆と言われるお二人の関係を物語る。真如法親王、嵯峨天皇など
空海と皇室との繋がりは強い。
          ❹空海像     ❺(国宝)狸毛筆奉献表

独鈷者、三鈷杵、五鈷杵の密教法具は馴染み深い。九鈷杵(❻)は
珍しい。これは、中国宋時代、12世紀の作。九鈷杵はあたかも、
胎蔵曼荼羅の中心にある中台八葉院のように思える。大日如来を
四仏・四菩薩が囲んでいるような造形だ。パワーを感じる。
❻(重文)金銅九鈷杵

名作の仏像も多く出陳されている。虚空蔵菩薩立像(❼)は平成
27年に国宝指定された。像高50cm程、カヤの一木造り。天衣
を含め一材でできているとは驚く。見事な造形だ。

銅造でありながら、木造に見える像が、阿弥陀如来坐像(❽)。
像高が20cm弱の小さな像であり、大変精緻にできている。
光背の薄さや、反りも見どころ。
❼(国宝)虚空蔵菩薩立像  ❽(重文)阿弥陀如来坐像

象や牛に乗る像もいい。帝釈天騎象像(❾)は東寺講堂の帝釈天像
と良く似た造形だ。お顔立ちは東寺像の方が若干上か?
閻魔天騎牛像(❿)は、安産を祈祷する時の本尊となったそうだ。
しかもこの像は、鳥羽天皇の皇后、待賢門院が出産された時に、
修された像らしい。両像とも歴史を感じさせる。
❾(重文)帝釈天騎象像 ❿(重文)閻魔天騎牛像

名仏師・快慶作の仏像も展示されている。快慶らしい整った顔立ち
の不動明王坐像(⓫)は、あまり怖さを感じさせない。直ぐ近くに
長賀筆の不動明王図像(⓬)が並んで展示。いずれも大師様(だいし
よう)と呼ばれる顔の造形をしている。東寺講堂の不動明王像と同じ
様式。

ところが、最近の研究で、根本像は高尾曼荼羅の中の不動明王の図像
の可能性が高いとのことだ。いずれも不動明王にしては、大人しい
表情。天地眼や牙上下出現の異形さはない。
⓫(重文)不動明王坐像 ⓬(重文)不動明王図像

図像で関心を引いたのは五秘密像(⓭)と五大尊像のうち、降三世
(ごうざんぜ)明王(⓮)。五秘密像は金剛界曼荼羅の向って右上角
にある理趣会(りしゅえ)に登場する菩薩と同じ顔触れになっている。
中央の金剛薩埵を囲む、周りの四菩薩は煩悩を表し、煩悩即菩提を
表現しているとのこと。菩薩で煩悩を表現することも面白い。密教
らしい尊像と言える。

降三世明王は三世王のシヴァ神とその妃ウマを踏み付ける姿が一般的。
この図像のウマ妃は 兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)を支える
地天女のように掌で支えるポーズを取っている。どういう意味か?
⓭(重文)五秘密像 ⓮(国宝)五大尊像の一尊

経典類で注目したのが宋版一切経および経函(⓯)。東大寺復興で
有名な重源が醍醐寺に施入したとされる。重源が醍醐寺のお坊さん
であることを思い起こしてくれた。
⓯(国宝)宋版一切経および経函

第一展示室の最後に、五大明王像(⓯)が横一列に並んでいる。
この像は、醍醐寺の二代目(初代座主)観賢(かんげん)が創建
したお堂の本尊と伝えられている。どことなく、ユーモラスな
雰囲気があり、愛着が持てる。東寺講堂像に次ぐ古作だそうだ。

「弘法大師」の諡号は、この観賢が醍醐天皇に奏請し、921年
に賜わった。
⓰(重文)五大明王像

第一展示室から第二展示室に移動する、階段の踊り場に薬師如来
および両脇侍像(⓱)が展示されている。以前の展示会では、この
場所で、快慶作の孔雀明王を観覧した記憶がある。

階段を下りながら、上からも、角度を変えながらも眺められる。
中尊の大きさに比べ、脇侍像が小さい。この時代の特色だろうか。
デフォルメすることが喜ばれていたことに起因するのかと感じた。
⓱(国宝)薬師如来および両脇侍像

第二展示室で、注目したものが三国祖師影(⓲)。三国とは、
インド、中国、日本のことであり、高僧46人の肖像を集成した
画巻のことだそうだ。その内の一部が展示されている。

上段右から「空海、実恵、真雅」。中段は「真済、真然、源仁」。
下段は「益信、聖宝、観賢」となる。真言宗系譜(⓳)で繋がり
が確認できる。

図録に掲載の系譜(⓳の右側)は、空海-真雅-源仁-聖宝となる。
別の資料(⓳の左側)では、空海-真雅-真然-聖宝となっている。
なお、実恵、真雅、真済は空海の直弟子、十大弟子に入る。
     ⓲(国宝)三国祖師影    ⓳真言宗系譜

書で驚いたのは信長の達筆ぶり。織田信長黒印状(⓴)を見て、
信長に対するイメージが一新する。信長の行状から想像できない。
書は人物のイメージさえ変える力があると感じた。凄い‼
⓴(国宝)織田信長黒印状

観覧を終え、美術館入口に掲示されたポスターを背景にして記念撮影
記念撮影

昼食は、イタリアンレストランでわいわいがやがや。
今回も、楽しい観覧でした。ご参加の皆さんに感謝。(合掌)
昼食歓談


2018年9月23日日曜日

中嶋莉恵さん講演会 4回目の開催‼


9月21日(金)は、生憎の雨模様。悪天候にも関わらず大勢の方が
参加された。西荻窪19名、荻窪5名、小平7名の総勢31名となる。

中嶋莉恵さんの講演会は今回で4度目となる。「仏像彫刻のお仕事」
をテーマに、3項目についてお話し頂いた。
最初に「閻魔王像制作 ~乾漆づくり~」、二番目に「大日如来像の
台座、光背制作」、そして最後に「創作活動」。

講演される中嶋さん

講演会を拝聴する参加者の皆さん
 
 
1.閻魔王像制作 ~乾漆づくり~ 
 
  奈良・興福寺 阿修羅像の制作技法が脱活乾漆づくり。
  その技法との比較で、閻魔王像制作を解説して頂いた。
 
  「脱活乾漆づくり」とは・・・①
  a.土で大まか形を作り、そこに漆で麻布を貼り付ける。
  b.乾いたら、中の土を掻き出し、空洞にし木組みを入れる。
  c.表面をパテ状の木屎漆(こくそうるし)で成型し、彩色する。
 
①興福寺 阿修羅像は脱活乾漆づくり
 
  閻魔王像の制作技法は、乾漆づくりと言っても、阿修羅像とは
  全く違う。粘土原型(②)は完成の形まで仕上げる。(阿修羅像
  では粘土は大まかな形)。制作の工程が次の通り違う。
 
  石膏の粉を水で混ぜ、②の原型の型を取る。その石膏型の
  内側に、漆や麻布の張り込みをする。その際、石膏から乾漆
  が剥がれやすくするための離型剤を予め塗っておくとのこと。
 
  漆が張り込められた石膏型(③)の補強と変形を防ぐために、
  芯木制作がなされる。今回ヒノキが使用された。期間をおいて、
  石膏型に蓋をして接着する。(④)その際、乾漆部分に特定の
  接着材を塗る。 
②粘土原型            
 
 
③石膏型の芯木制作         ④蓋をして接着
 
  次に、石膏割り出し(⑤)となる。蝋型鋳造で、周りの土を
  取り除くと、金銅仏が出現する場合と良く似ている。
  石膏割り出しの場合は、石膏が固く、乾漆は脆く、神経を
  使うようだ。
 
  割り出し後に見事な閻魔王像が現れた。(⑥) 伝統的な
  乾漆像づくりと異なる手順に驚く。 この技法を編み出した
  背景と理由について、もっと詳しく知りたいところだ。
  粘土原型の再使用はあるのだろうか?
⑤石膏割り出し         ⑥石膏割り出し後
 
  最終段階として、彩色へ移る。彩色の前に、白土を塗り、
  下地をつくるとのこと。天然顔料を何回も重ねて塗り、色に
  深みを出して行く。(⑦) 閻魔王像の冠、肩、袖などには
  繧繝彩色(うんげんさいしき)の技法が使われている。
  
  完成した閻魔王像は、川崎市登戸の光明院本堂に鎮座
  されている。(⑧)
 ⑦天然顔料による彩色     ⑧光明院に鎮座する閻魔王像
 
  <繧繝彩色についての解説>
   繧繝彩色とは、淡い色から濃い色へ色をぼかさず、
   段階的に変化させる事を基本とし、対比的に色を
   組み合わせることで、立体感や色彩効果をあげる
   彩色装飾技法の事。

   基本色は紺・丹・緑・紫(こん・たん・ろく・し)。対比の
   補色を組み合わせる技法。紺には丹、緑には紫を
   合わせる。奈良時代以降の技法と聞いて、先人の
   技量に、只々感服。

   閻魔王像を拝観する時には、この繧繝彩色を、最初に 
   眺めたい。
  
2.大日如来像の台座、光背制作
 
  大日如来像の台座、光背制作の経緯が大変興味深い。
  東京藝術大学所蔵・快慶作大日如来像の模刻像は
  中嶋さん勤務の工房社長が、東京藝大在学中に制作
  された像とのこと。
 
  この模刻像をお寺のご住職が気に入られた。快慶作像は、
  もともと台座・光背を失っている。(模刻像も台座・光背は無い)
 
  そこで、台座・光背の制作を求められることとなった。
  何をモデルや基準に、制作されたか興味津々で拝聴した。
 
  光背の制作過程を順追って、解説された。図面制作から
  始まり、木取り(⑨)、図面転写(⑩)、刳り抜き、透かし彫り
  の刳り抜き(⑪)、仕上げのポイントを話された。
⑨制作する光背の木取り

⑩画像転写           ⑪透かし彫りの刳り抜き
 
  二重円光の周りの透かし彫りの雲を配置し、雲の中には
  胎蔵曼荼羅の五仏四菩薩が化仏として荘厳される。(⑫、⑬)
  台座には足利・光得寺の大日如来ように、獅子を配置する。
  何と豪華な光背になることだろうかと想像した。
 
  智拳印の大日如来像の光背に、胎蔵界の五仏・四菩薩を
  配したのは、「金胎不二」の思想を反映した構成と推察した。
  「金胎不二とは金剛界と胎蔵の両部は二つでありながら
  一体である」とする真言密教教学の根本思想と学んだこと
  がある。
⑫化仏の原型づくり        ⑬化仏の乗った光背 
 
  お寺のお堂に安置された大日如来像は、どんなにか眩い
  輝きを放つことかと想像した。完成が待たれる。
 
 3.創作活動
   最後に、創作活動について、お話し頂いた。高島屋や三越
   での展示会には、良く足を運ぶ。いずれも、ふわふわした
   感触をイメージさせるの可愛い小鳥だ。木彫とは思えない
   ような柔らかい表現が凄い。

   中嶋さんの作品はいずれも、ソフトな手触りを感じさせる。
   「雨上がりのロバ」が気に入っており、今では、私のパソコン
   デスクトップ壁紙となっている。
一番最近の作品 ニットバード

高島屋に展示の作品        ニットバード2作目
 
講演を終えた後、質疑応答の時間を設けた。参加者から沢山の
質問が出た。一つ一つ、丁寧にお答え頂いた。参加の皆さんから
楽しく学べたとの感想を多く頂いた。伝統技法と現代最新技法との
融合を知ることができ、大変素晴らしい講演会だった。
 
中嶋さんは工房での仏像彫刻制作・修復、彫刻家としての創作活動、
美術教師のお仕事と、六面八臂のご活躍をされている。第5回目の
講演会を楽しみにしている。(合掌)
 
 
 

2018年8月12日日曜日

半蔵門ミュージアムで運慶作・大日如来像とご対面‼


8月11日(土)10時、荻窪グループの18名が東京メトロ半蔵門駅
4番出口の地上に集合した(①)。今年4月にオープンしたばかりの
半蔵門ミュージアムを訪れた。主たる目的は、運慶作の大日如来を
拝観すること。

早めに到着して、参加の皆さんが集まるのを待つ。ミュージアムの
開館は10時であり、入口はまだ閉じられたまま(②)。
①半蔵門駅4番出口地上      ②半蔵門ミュージアム入口

開館と同時に入館すると、受付で、入館証とパンフレット(③)が人数分
渡された。半蔵門ミュージアムはアクセス地図(④)の通り半蔵門駅地上
の直ぐそばに入口がある。

10時20分から、仏教文化に関する映画が始まると告げられた。そこで
最初に映画を視聴することにし、会場の3Fへエレベーターで移動した。

③ミュージアムのパンフレット   ④ミュージアムへのアクセス
                           (③の地図を拡大)

3Fのホールで待っていると、上映の準備ができたと、シアタールーム
へ案内された。映画は18分で、釈迦が悟りを開いたこと、仏像が制作
された理由、仏教が日本へ伝来したこと、日本における仏像の変遷、
運慶の登場等、時系列に分かりやく、興味深い内容となっていた。

この映画の監修が運慶研究の第一人者である、清泉女子大学教授
山本勉氏であることを最後に知り、成程と納得。また、坐り心地の良い
椅子など、充実した施設にも感心した。

映画視聴後は、B1Fのミュージアムで展示作品を観覧し、その後、2F
ギャラリーの運慶仏写真を眺めることとした。フロア案内(⑤)と展示品
目録(⑥)を見ながら移動した。
⑤フロア案内          ⑥展示品目録

展示品目録(⑥)は、
 期間:8月1日(水)~11月11日(日)、
 テーマ:3分類 となっている。入り口から順に
       「ガンダーラの仏教美術」
       「祈りの世界」
       「特集展示 信仰の絵画」 
        (⑦)
 
お目当ての大日如来像は「祈りの世界」に展示。ガラスケースに入り、
360度、間近で眺められる。背筋を伸ばした、若々しい造形にうっとり
する。運慶作・大日如来像に共通の特徴。いつ見ても素晴らしい。
⑦大日如来坐像などの展示品(パンフレットから)

B1Fミュージアムの観覧を終え、2Fギャラ―で運慶仏の写真を
眺めた。外見的には、玉眼始め、リアルな造形が運慶の特色と
言える。

本ミュージアム大日如来坐像の胎内納入品がX線写真で確認
できる。心月輪、五輪塔、仏舎利塔の配置に運慶仏共通の特徴
が見える。

展示の運慶仏写真で目に付くものが「上げ底式内刳り」と言う
技法。これも、運慶仏の特徴のようだ。台座を外して、仏像を
さかさまにし、像の底を見ない限り確認できない。

写真を堪能した後は、同じフロアにあるラウンジでお茶を頂き
ながら、休憩した。無料で、運慶作の仏像を観覧し、その後
ゆっくり寛げるとは、何と有難いことか。

そろそろ、昼食時となる。丸の内のレストランで食事をしようと
地下鉄に乗り、向かった。新丸ビル内のレストランで、昼食を
美味しく頂いた。

今日も楽しいひと時となった。ご参加頂いた皆さんに感謝。
(合掌)