住友財団修復助成30年記念特別企画「文化財よ、永遠に」
が上野の東京国立博物館・本館で開催されている。
10月24日(木)、11月9日(土)、グループ活動の仲間
と一緒に訪れた。平成館の正倉院展は長蛇の列。本館の来館者
は少なく、ゆっくり眺めることができた。
仏像が文化財として、公的に保護されるようになったのは
明治30年の「古社寺保存法」ができたことによる。年数
にして、120年程しか経っていない。
仏像は文化財以前に「仏様」として、大切に思う人達に
よって護られてきた。(一方、廃仏毀釈等による災難の歴史
もある。)
仏像には、「仏様」「文化財」の二面性があると同時に、
融合したパワー・魅力を感じる。
〇展示作品は26件(❶所蔵先地図に記載の地域、所蔵者)
〇26件の員数は仏像48体、能面4面(❷、❸、❹の
展示リスト)
〇2会場の作品配置図・・・❺、❻
〇作品図像・・・展示会図録に尊名を表記(❼、❽)
❶所蔵先地図 ❷展示リストNo.1
❸展示リストNo.2 ❹展示リストNo.3
❼図録に尊名表記A ❽図録に尊名名表記B
住友財団が文化財修復事業への助成を始めた背景に、当時
平山郁夫氏(日本画家、元東京藝術大学学長)の影響が
あったと財団理事長の住友吉左衛門氏は次のように書かれ
ている。
「平山先生は、『文化財赤十字構想』を提唱しておられました。
それは政治や思想、宗教の違いを乗り越え、人類共通の財産
である文化財を守ることで、平和と人間性を取り戻すことが
できるのだと考えておられました。」
平山郁夫氏の構想や住友財団の活動は、仏像を愛する我々に
とって、大いに共感できる。今後も支援して行きたい。
今回の展示で印象に残った仏像について列挙してみると、
(展示番号順に)
1.七仏薬師如来立像(岩手・正音寺)
後世の彩色を除去した姿に清々しさを感じる。以前は
まるで、厚着の衣をまとっているようだった。
4.虚空蔵菩薩坐像(福島・龍門寺)
東日本大震災によってバラバラになった写真も展示
されている。見事な修復ぶりに驚く。
5.十一面観音菩薩立像(福島・泉竜寺)
衣や頭上化仏の大まかな彫り、頬の張った顔立ちが
鄙びており、地方の仏像を感じさせる。
8.不動明王立像(長野・不動寺)
接合部の劣化が激しく、自立できない状態であった
とのこと。しっかり立っている姿と合わせて、この
仏像が、高野山から移ってきたとの解説があった。
本像の来歴にも思いを馳せた。
10.虚空蔵菩薩坐像(茨城・真壁町山口地区)
修理の担当が東京藝大の保存修復彫刻研究室であり、
注目した。我が倶楽部ではこの研究室へ少額ながら
毎年、寄付をしている。文化財保護を担う人たちが
育ってほしいと願っている。
この虚空蔵菩薩は背面を補作・組み立てし、頑強に
修復されていた。
次の12、13、14はいずれも、今までに拝観したことがあり、
「初めまして」ではなく「お久しぶりです」の仏像。
12.阿弥陀如来坐像および両脇侍立像(埼玉・保寧寺)
昨年、金沢文庫での「運慶展」に展示されていた。
その時の模様は、2018.2.13ブログにアップした。
作者の宗慶(そうけい)は、運慶と共に、康慶の弟子に
当たる。かすかにほほ笑むような阿弥陀如来は秀逸。
13.阿弥陀如来坐像および両脇侍立像(神奈川・常楽寺)
昨年、7月に常楽寺を参詣した。その時には、両脇侍が
修理のため不在となっていた。(2018.7.16ブログ)
北条泰時の臨終仏と知ると、また見方に変化が起こる。
阿弥陀如来のお顔は宋風か、異国情緒の感。
14.不動明王および二童子立像(神奈川・寶金剛寺)
国府津にある寶金剛寺には2016年11月に訪れた。
不動明王の解体修理時に頭部から仏舎利が出て来たとの
お話をご住職からお聴きした。その仏舎利は元の状態に
戻すこととなり、現在も頭部に納められているそうだ。
(2016.11.27ブログ)
19.十二神将立像(滋賀・金剛輪寺)
6体が展示された十二神将の中で、今までに目にした
ことのない造形があった。一番奥に展示の十二神将は、
金剛力士像のように、上半身裸形となっていた。この
像は、いつから十二神将になったのか?
23.千手観音菩薩立像(福井・高成寺)
この像ほど、修理前と修理後の印象が違った像はない。
厚化粧したように、真っ白に塗られた彩色が除去される
と見違えるほどの仏様となって現れた。国の重要文化財
にも指定されている。誤った修理は仏像の品位を下げる。
26.阿弥陀如来立像(ベトナム国立歴史博物館)
今回の展示作品で一番、印象に残った仏像は、ベトナム
からの阿弥陀如来像。バランスの良い造形や快慶風の
お顔立ちなど、どこから見ても非の打ちどころがない。
昭和18年に当時インドシナ半島を統括していたフランス
極東学院と東京国立博物館の文化財交換で贈ったものとの
こと。海外との交流は喜ばしいことではある。一方、なぜ
この仏像が交換の対象となったのかと寂しい思いもする。
この像の修復は、日本の修理技術者がベトナムを訪れて
行ったようだ。75年を経ての里帰りとなった。文化財
の保護を通して、更なる国際交流へ繋がることを願う。
26阿弥陀如来立像(図録から)
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