2019年11月26日火曜日

「花南仏像の会」仏像めぐり(山梨)①大善寺


11月22日(金)小平「花南仏像の会」主催のバスツアー
が開催された。西武新宿線・花小金井駅そばのピーコック前
を7時に出発。山梨県仏像めぐりの旅が始まった。

参拝予定寺院は、午前中が大善寺仁勝寺青松院。昼食を
挟んで午後から、甲斐善光寺放光寺の合計5ヵ寺。

1.大善寺(だいぜんじ)<真言宗智山派 甲州市勝沼町勝沼3559>
  ●通称名はぶどう寺 ●ご本尊・薬師如来(秘仏)の左手は、
   薬壺(やっこ)でなく、ぶどうの房を持つ。

  大善寺の本堂は寺務所の脇から長い階段を上ったところ
  にある(❶)。大善寺は沢山の文化財を所蔵している(❷)。
  見どころは、国宝・薬師堂と堂内の諸尊像。
❶大善寺境内案内図      ❷大善寺の文化財

  寺務所で受付を済ませ、階段を上り山門を目指す(❸)。
  重厚な山門は威容を誇る。山門には阿吽の金剛力士像が
  構えている(❹❺)。この像もなかなかの風格。

  山門のそばには大善寺が歴史の舞台となったことを紹介
  する看板が立っている。「武田勝頼投宿地(❻)」や
  「近藤勇最終の戦い(❼)」。

❸階段を上り山門へ

❹吽形像           ❺阿形像

❻武田勝頼投宿の地 看板  ❼近藤勇最終の戦い 看板

  山門からの階段を更に上る。前方にはお堂が見え、階段の
  両側には紅葉した木々や、ご神木とされる巨木が立つ(❽)。

  前方のお堂は、「楽屋堂」と言い、祭りや縁日に音楽が奏で
  られる。楽屋堂の床下を潜るようにして本堂前の広場に出て
  来る(❾)。
❽山門から階段を更に上る   ❾楽屋堂の床下を潜る

  楽屋堂の横に、金属製の解説板が設置されていた(❿⓫⓬)。
  「甲州ぶどう発祥の地(❿)」では、大善寺が奈良時代の
  高僧・行基によって開創されたことや薬園をつくって民衆
  を救済したことが記されている。ぶどうが薬として栽培
  されていたことを初めても知った。

  「国重要文化財 木造薬師如来及両脇侍像(⓬)」には、
  ご本尊の薬師三尊像が桜材の一木造漆箔像で、密教風の
  弘仁仏であることが記されている。
【山梨県教育委員会 他2団体が設置した解説板】
❿甲州ぶどう発祥の地     ⓫武田勝頼主従投宿の地

⓬木造薬師如来及び両脇侍像

  いよいよ、お目当ての薬師堂参拝となる。檜皮葺(ひわだ
  ぶき)で落ち着いた、端正な形が大変美しい(⓭)。
  さすが国宝と感心する。

  薬師堂では、お寺の方が解説された。勝沼町年中行事の
  「藤切り祭り」「鳥居焼き」などの紹介や、テレビドラマ
  「逃げるは恥だが役に立つ」のロケがこの薬師堂で行われ
  たことも話された。その時の座布団がそのまま置いてある。

  薬師堂内陣は須弥壇中央に厨子が設えてあり、その厨子を
  囲むように諸尊像が並んでいる(⓮)。右側に日光菩薩像、
  左側に月光菩薩像が立つ。

  十二神将像が厨子の左右に6体ずつ並ぶ。右側から干支の順
  となっている。また、右隅に文殊菩薩像、左隅に毘沙門天像
  も鎮座。文殊さんと毘沙門さんが安置されるのはなぜか?

  厨子の御開帳は5年に1度であり、残念ながらご本尊は写真
  のみの拝観となった。実際の像容は⓯⓰の通り。像高は、
  薬師如来像が90㎝弱、日光・月光菩薩像が1m強と小ぶり
  でありながら、弘仁仏らしくボリューム感がある。

  厨子は薬師堂に組み込まれ一体となっている。その様子は、
  お堂の裏側に回ると確認できる。(裏側まで拝観可能)
⓭国宝・大善寺本堂(薬師堂) ⓮薬師堂内陣 厨子と諸尊像
            (ネットから)

⓯国宝・厨子と三尊像 ⓰(同左)薬師如来及び両脇侍像
(ネットから)     (絵葉書から作成)

  国宝の薬師堂と厨子、重要文化財の日光・月光菩薩像、
  十二神将像を拝観でき、大変満足。拝観を終え、記念撮影。
  皆さん笑顔で楽しそう。
⓱薬師堂の前で記念撮影
(筆者撮影)

  社務所のある地点まで紅葉を愛でながら下山する(⓲)。
  途中、ご神木の霊気を体感するため、抱きつく人もいた(⓳)。
⓲拝観を終えて下山    ⓳ご神木の霊気を体感
<続く>




2019年11月24日日曜日

文京区 浄心寺を参詣


11月21日(木)10時、地下鉄南北線の「東大前」駅に集合。
浄心寺へ向かう。本郷通りを進み、徒歩7分で到着する(❶)。
門前には、白いお顔、赤い衣の巨大な石仏・布袋尊像が立つ(❷)。
❶浄心寺への案内図  ❷門前に立つ布袋尊像

境内に入り、参道の正面に本堂が見える(❸)。受付に到着をお伝え
すると、本堂に通された(❹)。写真撮影も許可された。受付の女性
の応対は、大変気持ち良い。
❸境内の参道        ❹本堂内陣

暫く本堂内を拝観していると、お坊さんがお見えになり、お寺の
縁起などを解説された。69歳で仏門に入ったとの自己紹介も
あり、親近感を覚えた。(執事の鍵和田様と後程知る。)

浄心寺は徳川二代将軍秀忠の頃に、湯島妻恋坂付近に創建され、
江戸の大火で現在の地に移転された。第二次世界大戦での空襲
で堂宇を焼失し、戦後復興、再建され、今日に至っている。

浄心寺は浄土宗の寺院。本尊の阿弥陀如来像を中央に、左脇侍
(向かって右)に十一面観音菩薩像、右脇侍に勢至菩薩像が
並ぶ(❺)。

江戸三十三観音の第十番札所にもなっており、十一面観音菩薩
が札所本尊となっている(❻)。
❺阿弥陀如来と両脇侍像 ❻十一面観音菩薩像

鍵和田様から、「阿弥陀如来はどんな仏様か」「お焼香の意味」
などについても、分かりやすく解説頂いた。質問もしながら、
11時過ぎまで本堂で楽しく過ごした。

堂内には、十一面観音立像(❼)や虚空蔵菩薩坐像(❽)と、
密教系の仏像も安置されている。浄土宗の寺院なのになぜだろう
かと不思議な思いがしていた。

桁違いに大きい木魚(❾)や、堂々とした虎の彫刻(❿)も
置かれている。これらは先代のご住職が好んでいたようだ。
ユーモラスな感じもして堂内の雰囲気を和らげている。
❼不動明王立像     ❽虚空蔵菩薩坐像

❾巨大な木魚       ❿虎の彫刻

解説と拝観を終えて、本堂を背に記念写真撮影をした(⓫)。
境内で掃除をしていた方にシャッターをお願いした。
⓫本堂を背に記念撮影

お昼までに時間があり、根津神社もお参りしようということに
なり、訪れた(⓬)。
⓬根津神社も参詣

今回は参加人数6名と今までにない少人数となった。
少人数のメリットは、昼食のお店はどこでも選べる。
釜めしのお店に入り、歓談しながら頂いた。

翌日、執事の鍵和田さんからお電話があった。不動明王像や
虚空蔵菩薩像は、十三仏の仏として安置されているとのこと。
なるほどと納得した。それにしても、親切な方だ。

それにしても、浄心寺の皆さんは親切な方ばかりだ。また
参拝したいと強く感じた。



2019年11月18日月曜日

日常語となった「仏教由来のことば」を考える④


今回取り上げることばは「出世」と「道場」の二つ。
仏教語本来の意味において、この二つのことばに共通
する人がいる。誰だろう?

答えは、お釈迦様。(仏教語なら当然ことかもしれ
ないが・・・)

出世』とは釈迦がこの世に出現したことを言う。釈迦
 が多くの人を教化したことから、〝より多くの衆生を
 教える″立場になることを指し、やがて高い地位に就く
 こととなったそうだ。

道場』とは釈迦が悟りを開いた場所、ブッダガヤ―に
 ある菩提樹の下、釈迦が座った場所をいう。
 金剛座、獅子座とも呼び、その漢訳が道場とのこと。

 正に、悟りへ至ったを示す所と言える。
 転じて、武道など修行する場所を指すようになった。

 日常語の「出世」「道場」は仏教語としての当初の意味
 と相容れないことがよくある。

 地位が上がったにも関わらず、その地位に見合った役割が
 なされなかったり、私利私欲に走るようでは、出世した
 とは言えない。
 
 「出世」とは、自分のためではなく、人々のために役割
 を果たしたことで生まれたことばと言える。地位が上がる
 ことと出世することとは別物だ。

 指導の名の下に暴力やパワハラを起こす道場を目にする。
 お釈迦様が悟った場所と言う意味に照らし合わすと、
 暴力等は、あってはならないことであり、神聖な道場
 を穢すようにも思える。

 「道場」と言うことばには、釈迦の悟りが含まれている
 と意識するだけで、その後の言動が違って来るように
 思える。そもそも修行は、人から強制されるものでなく
 自ら求めて行うものではないだろうか。
 
 近所の書店を覗くと、仏教雑誌が「日常会話の中の仏教語」
 を特集していた。仏教語は、日常の出来事を見る視座を提供
 してくれる。
大法輪12月号

2019年11月11日月曜日

東京国立博物館「文化財よ、永遠に」観覧!


住友財団修復助成30年記念特別企画「文化財よ、永遠に」
が上野の東京国立博物館・本館で開催されている。

10月24日(木)、11月9日(土)、グループ活動の仲間
と一緒に訪れた。平成館の正倉院展は長蛇の列。本館の来館者
は少なく、ゆっくり眺めることができた。

仏像が文化財として、公的に保護されるようになったのは
明治30年の「古社寺保存法」ができたことによる。年数
にして、120年程しか経っていない。

仏像は文化財以前に「仏様」として、大切に思う人達に
よって護られてきた。(一方、廃仏毀釈等による災難の歴史
もある。)

仏像には、「仏様」「文化財」の二面性があると同時に、
融合したパワー・魅力を感じる。

〇展示作品は26件(❶所蔵先地図に記載の地域、所蔵者)
〇26件の員数は仏像48体、能面4面(❷、❸、❹の
 展示リスト)
〇2会場の作品配置図・・・❺、❻
〇作品図像・・・展示会図録に尊名を表記(❼、❽)
所蔵先地図        展示リストNo.1

展示リストNo.2     ❹展示リストNo.3

第一会場 仏像配置図   第二会場 仏像配置図


図録に尊名表記A      図録に尊名名表記B

住友財団が文化財修復事業への助成を始めた背景に、当時
平山郁夫氏(日本画家、元東京藝術大学学長)の影響が
あったと財団理事長の住友吉左衛門氏は次のように書かれ
ている。

「平山先生は、『文化財赤十字構想』を提唱しておられました。
 それは政治や思想、宗教の違いを乗り越え、人類共通の財産
 である文化財を守ることで、平和と人間性を取り戻すことが
 できるのだと考えておられました。」

平山郁夫氏の構想や住友財団の活動は、仏像を愛する我々に
とって、大いに共感できる。今後も支援して行きたい。

今回の展示で印象に残った仏像について列挙してみると、
(展示番号順に)
1.七仏薬師如来立像(岩手・正音寺)
  後世の彩色を除去した姿に清々しさを感じる。以前は
  まるで、厚着の衣をまとっているようだった。

4.虚空蔵菩薩坐像(福島・龍門寺)
  東日本大震災によってバラバラになった写真も展示
  されている。見事な修復ぶりに驚く。
   
5.十一面観音菩薩立像(福島・泉竜寺)
  衣や頭上化仏の大まかな彫り、頬の張った顔立ちが
  鄙びており、地方の仏像を感じさせる。
 
8.不動明王立像(長野・不動寺)
  接合部の劣化が激しく、自立できない状態であった
  とのこと。しっかり立っている姿と合わせて、この
  仏像が、高野山から移ってきたとの解説があった。
  本像の来歴にも思いを馳せた。

10.虚空蔵菩薩坐像(茨城・真壁町山口地区)
  修理の担当が東京藝大の保存修復彫刻研究室であり、
  注目した。我が倶楽部ではこの研究室へ少額ながら
  毎年、寄付をしている。文化財保護を担う人たちが
  育ってほしいと願っている。
  この虚空蔵菩薩は背面を補作・組み立てし、頑強に
  修復されていた。

次の12、13、14はいずれも、今までに拝観したことがあり、
「初めまして」ではなく「お久しぶりです」の仏像。  
12.阿弥陀如来坐像および両脇侍立像(埼玉・保寧寺)
  昨年、金沢文庫での「運慶展」に展示されていた。
  その時の模様は、2018.2.13ブログにアップした。
  作者の宗慶(そうけい)は、運慶と共に、康慶の弟子に
  当たる。かすかにほほ笑むような阿弥陀如来は秀逸。

13.阿弥陀如来坐像および両脇侍立像(神奈川・常楽寺)
  昨年、7月に常楽寺を参詣した。その時には、両脇侍が
  修理のため不在となっていた。(2018.7.16ブログ)
  北条泰時の臨終仏と知ると、また見方に変化が起こる。
  阿弥陀如来のお顔は宋風か、異国情緒の感。

14.不動明王および二童子立像(神奈川・寶金剛寺)
  国府津にある寶金剛寺には2016年11月に訪れた。
  不動明王の解体修理時に頭部から仏舎利が出て来たとの
  お話をご住職からお聴きした。その仏舎利は元の状態に
  戻すこととなり、現在も頭部に納められているそうだ。
  (2016.11.27ブログ

19.十二神将立像(滋賀・金剛輪寺)
  6体が展示された十二神将の中で、今までに目にした
  ことのない造形があった。一番奥に展示の十二神将は、
  金剛力士像のように、上半身裸形となっていた。この
  像は、いつから十二神将になったのか?

23.千手観音菩薩立像(福井・高成寺)
  この像ほど、修理前と修理後の印象が違った像はない。
  厚化粧したように、真っ白に塗られた彩色が除去される
  と見違えるほどの仏様となって現れた。国の重要文化財
  にも指定されている。誤った修理は仏像の品位を下げる。

26.阿弥陀如来立像(ベトナム国立歴史博物館)
  今回の展示作品で一番、印象に残った仏像は、ベトナム
  からの阿弥陀如来像。バランスの良い造形や快慶風の
  お顔立ちなど、どこから見ても非の打ちどころがない。
  
  昭和18年に当時インドシナ半島を統括していたフランス
  極東学院と東京国立博物館の文化財交換で贈ったものとの
  こと。海外との交流は喜ばしいことではある。一方、なぜ
  この仏像が交換の対象となったのかと寂しい思いもする。
  
  この像の修復は、日本の修理技術者がベトナムを訪れて
  行ったようだ。75年を経ての里帰りとなった。文化財
  の保護を通して、更なる国際交流へ繋がることを願う。
26阿弥陀如来立像(図録から)



 

2019年10月31日木曜日

日常語となった「仏教由来のことば」を考える③


今回のことばは「我慢」、「頑張る」について考えてみたい。

日常語で
我慢」とは「耐え忍ぶこと」。
頑張る」とは「あることを成し遂げようと、
  困難に耐えて努力すること」。
いずれもプラスイメージのことばと言える。

それでは、仏教語としての意味はどうだろうか。
我慢」とは、「煩悩の一つ、強い自己意識から起こす
  慢心のこと」とある。
頑張る」とは、「“我張る”が変化したもの」とある。
いずれも強い自己意識のことばであり良いイメージはない。

「我を張る」「我意を張る」と言う強情な心意のエネルギー
が自身の内面に向けられることばとなって、良いイメージと
なったのではないかと想像する。

お釈迦様は、山に籠って、断食を続け、極端な修行を重ねて
も悟れず、下山して穏やかな生活の中から悟りを開かれた。
お釈迦様は我慢し、頑張ることを止めて、悟られたとも言える。

「我慢」「頑張る」は良いことには間違いない。然しながら
仏教語の意味を考え合わせると、「我慢しすぎ」「頑張り過ぎ」
と極端なレベルまで行うことは如何なものかと思われる。

「我慢」「頑張る」も自分自身が心がけることで、他人に対し
求めるものではない。励ましのつもりで言った「頑張れ」も、
人によってはプレッシャーにしかならない。




2019年10月27日日曜日

日常語となった「仏教由来のことば」を考える②


今回のことばは「迷惑」「邪魔」を取り上げ、考えてみたい。
仏教語としての意味は以下の通り。
〇「迷惑」の「迷」は本当の道に迷うこと、「惑」は途方に
  くれて戸惑うことを意味するそうだ。
〇「邪魔」とは、お釈迦さまの修行を妨げる〝心の悪魔″を
  意味するとのこと。

いずれも、心のあり方・ありよう、内面の状態を表したことば
と言える。一方、日常語として使用される場合は意味が違う。

日常語の「迷惑」は自分にとって不利益とか不都合を意味する。
また、「邪魔」は自分の都合で「邪魔な人」「邪魔な物」と
外側にあるものに使われる。

仏教語としての意味は、共に修行で煩悩を克服しようとする
姿勢が阻害された状態や、原因を表している。いずれも心の
内面のことであり、自身のあり方についてのことばと言える。

日常語は、自分の煩悩は問題にしないで、問題点や原因を外部
に求めている。このようなことばの使われ方は、お釈迦様に
とって、さぞかし心外なのではないだろうか?

都内のある区で児童相談所が開設されるという計画が出た時、
地域住民の一部から、「迷惑だ」「このエリアのブランドが
下がる」とのクレームが出た。

このニュースを知った時、「迷惑」は「児童相談所」ではなく、
クレームを言う人たちの心が「迷惑」になっているのではないか
と感じた。(もし、納得できる理由があったのであれば失礼。)

仏教語本来の意味を知ることで、ものの見方や、感じ方まで
再点検できる。仏教語は面白い!


2019年10月22日火曜日

日常語となった「仏教由来のことば」を考える


何気なく話している日常語に仏教(仏像)に由来することばが
数多くある。好むと好まざるに関わらず、日本語が仏教の影響
をいかに受けていたかを物語る。

「迷惑」「邪魔」、「我慢」「頑張る」、「挨拶」「玄関」、
「出世」「一大事」、「言語道断」「道楽」などのことばも
仏教由来のようだ。しかし、本来の仏教語とは違った意味で
使用されていることも多い。

仏教語本来の意味を知ることで、使い古した日常語に新たな
命が吹き込まれる思いがする。仏教的考え方や価値観を言い
表すことばとして蘇る。

今回取り上げることばは『空(そら)で覚える』。
上記「迷惑」以下のことばは、別の機会に論じる。

1.『空(そら)で覚える』の「空(そら)」とは何か?
  物事を暗記することであり、「空(そら)んじる」とも
  言う。「そら」とは虚空蔵菩薩から転じたものとのこと。 

2.虚空蔵菩薩とはどんな仏か?
  虚空蔵菩薩が信仰を集めた最大の要素は人間的な「知恵
  とくに「記憶」と言われている。そこで、虚空蔵菩薩が
  仏教的にどのような存在かを見て行きたい。

3.虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)の主尊
  この修法は空海が入唐前に修したことであまりにも有名
  となっている(❶)。短期間で、密教の奥義を修得した
  のも、虚空蔵菩薩の功徳か。
❶虚空蔵菩薩と虚空蔵求聞持法

4.胎蔵界曼荼羅の中の虚空蔵菩薩(❷、❸)
  胎蔵界曼荼羅は、大日如来のエネルギー(智慧と慈悲)が
  遍満している世界を表現している。智慧は金剛蔵王菩薩など、
  慈悲は千手観音菩薩などへと分有されて行く。
  (智慧とは仏の知恵。)

  虚空蔵菩薩は両者のエネルギーが集中する存在としてある。
  正に、智慧、慈悲、福徳(現世利益)の仏として位置づけ
  されている。大日如来を功徳を備えていると言える。
❷胎蔵界曼荼羅の諸尊     ❸虚空蔵菩薩の功徳

5.信仰の虚空蔵菩薩
  虚空蔵菩薩の信仰面を「❹虚空蔵菩薩の特性」として
  まとめてみた。地蔵菩薩との対比は古くからあった概念
  のようだ。寛永寺・両大師阿弥陀堂に二尊像が安置されて
  いるのを拝観した(❻)

  十二支守り本尊と十三仏(❺)、十三詣り、十三日の縁日
  など庶民信仰をまとめた。「十三」が虚空蔵菩薩と縁のある
  数字のようだ。

  「明けの明星(金星)」は、空海が虚空蔵求聞持法を修して
  いる時に、口から体内に迎えるという超常現象を経て、修行
  を完遂した。<高知県室戸岬の御厨人窟(みくろど)>
❹虚空蔵菩薩の特性    ❺十二支の守り本尊など

❻寛永寺・両大師 阿弥陀堂

『空で覚える』から始まり、虚空蔵菩薩について論じた。
観音菩薩や地蔵菩薩が人気なの比し、虚空蔵菩薩は、
あまり知られていない。丑年生まれの筆者にとって、
守り本尊ということもあり、少しPRさせて頂いた。