2014年5月29日木曜日

「映像から学ぶ仏像の見方」講座開催

 
BAC会員杉原さんのご依頼で仏像講座・講師をお引き受けした。会場は
ゆうゆう阿佐谷館、先着20名募集の講座として企画された。
 
講師紹介が仏像研究家となっているのには驚く。研究家と言われると
ちょっと気恥ずかしい。単なる愛好家のつもりでいる。
 
当日の参加者は21名。高井戸でのお話(4月19日の講演会?)を聴いて、
また参加しましたと言う方が数名。所蔵の仏像(童子像と円空仏)をご持参
されて、いろいろご質問される方。94歳のご高齢の方。女性が多い。
 
荻窪東館での講座でご一緒の林田さんもご参加とは嬉しく、有難い。
 
「今回は初級編を」とのご要望。「序列と系列」という整理棚での解説とした。
基本的なことと合わせ、人気仏像の画像をたくさんご紹介した。
 
皆さん、熱心にメモを取り、質問も多く、活気ある講座となったように思う。
終了後、お勧め図書の照会や、今後の学習方法などについての質問も
受ける。体系的な話が聞けて、整理がついたとのお言葉も頂く。
本日も仏縁が広まったように感じられた。(合掌)
 
 ご紹介解説画像の一つ              講座の様子

2014年5月22日木曜日

東京藝大 大学美術館「法隆寺ー祈りとかたち」を観覧!


午後からの天気が危ぶまれる。朝は晴天。青空の下、上野駅から
藝大美術館へ向かった。10時、美術館入口に19名の会員が集合。
法隆寺展を観覧した。

 
                   陳列館・阿弥陀浄土図 前
 
 
【陳列館に展示の浄土図】
                 釈迦浄土図

弥勒浄土図         薬師浄土図
 
阿弥陀浄土図
 
 何と言っても、今回の展示の中で、一番の注目は国宝の吉祥天立像と
毘沙門天立像。両像とも小振りなのは、法隆寺金堂の釈迦三尊像に
合わせたためとのことだ。動きや表情も控えめな感じがする。
 
両像とも彩色や截金が見事に残っている。普段、目にすることのできない
背面の彩色も拝見した。その鮮やかさに驚いた。紫外線に当たる時間が
少ないためか。背面は、美術館でしか鑑賞できない。
 
この像を前にし、毎年、新年行事の吉祥悔過(きちじょうけか)が行われて
いる。今までどれだけ、多くの人の懺悔を受け止めてきたのであろうかと
ついつい想像してしまった。
 
もう一つの注目は祈りの仏画・鈴木空如の金堂壁画模写。壁に掛けられ
た原寸大の壁画には圧倒される。原画の傷みまで再現されている。これ
だけの技量があれば、修理しての仏画も拝観したかった。
 
特に、阿弥陀浄土図は鮮やかな色彩であり、浄土図の中で一番インパクト
があった。阿弥陀、釈迦、薬師、弥勒の浄土や菩薩像に囲まれた空間は、
祈りに満ちた特別な場所、浄土の世界であっただろうと想像がつく。
また、鈴木空如にとっては、後世に伝えようと必死に格闘した世界でも
あった。
 
いろんな作者が制作した聖徳太子像(彫刻、絵画)がいくつも展示されて
いる。二歳像、孝養像、摂政像、厩戸皇子、上宮皇子など聖徳太子ほど
神格化された人物はいないと改めて認識した。平櫛田中 彫刻、前田青頓
彩色の聖徳太子像(摂政像)が好きだ。
 
高村光雲作 定胤和上像も素晴らしい。高僧のオーラを感じさせる像で
あり、眼のくぼみが眉に見える。この方が法隆寺の宗派、聖徳宗を興した
学僧とのことだ。
 
金堂壁画は別棟の陳列館でも展示されている。こちらは最先端技術を駆使
した「超高精細映像表現作品」となって紹介されていた。法隆寺金堂を再現
した展示で臨場感がある。
カメラ撮影の了解を得、阿弥陀浄土図をバックに一枚撮らせて頂いた。
 
法隆寺展は今回が2度目の観覧であり、法隆寺と東京美術学校(藝大)
とのつながりも理解が深まった。藝大には引き続き、日本の文化遺産保護
のためぜひご尽力をお願いしたい。BACも微力ながらご支援させて頂く。
 
終了後、8名で中華料理に舌鼓を打った。
 
 

2014年5月16日金曜日

中島憲子さん解説「新納忠之介と百済観音」

 
5月定例会は25名の参加。本日のメインは中島憲子さんが解説される
「新納忠之介(にいろちゅうのすけ)と百済観音」。来週には藝大美術館
での「法隆寺展」を観覧することもあり、しっかり事前学習も済ませたい。

最初に、先月の見仏会「塩船観音寺」をスライドを見ながら、感想を伺った。
境内のつつじは観るも、堂内の仏さまを拝観することは今までになかった
ようだ。歴史ある古刹なだけに、見どころ満載の寺と言える。

中島さんが、レジュメとスライドを使い、新納忠之介の偉大さを解説された。
中島さんは「百済観音半身像を見た(野島正興著、晃洋書房)」を読まれ、
感銘を受け、今回ご発表されるに至った。

岡倉天心が廃仏毀釈の中から、多くの仏像を救ったことは承知していた。
実際に、修復の任に当たった新納忠之介までは、恥ずかしながら、存知
あげていなかった。

明治30年(1897)に古社寺保存法が制定され、国宝指定と仏像修理が
本格的に行われるようになる。翌年、天心とともに美術大学を辞職して、
日本美術院創設に参加、修理保存技術部門の責任者となる。

中島さんの解説で、新納忠之介の心情が良く理解できた。仏像修復へ
かける情熱。また一方、自身の創作活動への思いと、揺れ動く心理的
な葛藤も想像できた。

修理した仏像が2631体(昭和12年まで)とのことだ。その数の多さに驚く。
また、昭和8年(1933)には百済観音を2体模造し、東京国立博物館と
大英博物館に納めたようだ。ぜひ、一度は拝観したい。

「新納忠之介と百済観音」の解説をされる中島さん

解説に耳を傾けるご参加の皆さん
 
仏像の修理は古くからあったことだが、国宝としての保存を目的とする
修理は全く初めてのことであり、大変なご苦労であったろうと想像される。
 
今日、奈良の仏さまで新納忠之介の世話になっていない仏さまはない
といっていいそうだ。本当に頭が下がる。新納忠之介の情熱に感銘を受け、
中島さんから早速本をお借りした。
 
新納忠之介 作
百済観音立像 模造
 
新納忠之介と同じ時代の人で、今回の法隆寺展に作品が展示される方
をお二人ご紹介した。平櫛田中と鈴木空如。田中は彫刻、空如は仏画。
田中については小平にある美術館へ一度ご案内することとした。また、
空如についてはEテレの日曜美術館で紹介されることをお知らせした。
古仏画を模写し、後世に伝えようと格闘した空如の生き方にも感服。
 
出陳される仏像の中で、一番の注目は、国宝の吉祥天と毘沙門天の
両立像だ。この像が、なぜ法隆寺金堂・釈迦三尊像の脇に鎮座される
のか、また何のために造像されたかを知ることができた。
 
「仏像歳時記」の中で「法隆寺の修正会」について詳しく書かれている。
一度、良くお読みいただきたい。
吉祥悔過(きちじょうけか)のご本尊として祀られている。「悔過」とは自ら
の罪や過失を仏前で悔い改めることで、利益を願う儀式のことだそうだ。
 
平安時代の人々がこの像の前で、どのような思いでお参りしたかを想像
しながら拝観するのも良いのではないだろうか。仏像も、その履歴を知り
時代を遡って思いを馳せることで、日本人の心情や伝統を再認識できる
ように思える。
国宝 吉祥天立像・毘沙門天立像