2014年12月25日木曜日

多摩美術大学美術館「四国遍路と土佐のほとけ」を観覧


今年最後の見仏会は多摩美術大学美術館・特別展の観覧。ご参加は
慌ただしい年末にも関わらず18名と大人数となる。多摩センター駅を
降りて徒歩7分の距離に美術館がある。ほとんどの方が初めての来館
のようだ。

今回の展示会は四国霊場開創1200年を記念して「四国遍路と土佐の
ほとけ」をご紹介されている。特別展のタイトルは「祈りの道へ」。

サントリー美術館「高野山の名宝展」(10月観覧)は高野山開創1200年
記念であり、東博「日本国宝展」(11月観覧)のテーマが「祈り、信じる力」
で開催された。多摩美美術館の特別展は二つの展覧会と共通するテーマ
を持っている。即ち、「祈り」と「空海」だ。

 特別展のチラシ
 
主任学芸員・淵田さん丁寧で明快な解説をお聴きしながら、観覧した。
出品は、A室「遍路文化」、 B室「考古・七星剣・仏画」、C室・D室
「仏像」と区分されている。
 
入館して最初に目にするものが「箱車」。遍路は、健常者ばかりでは
ないことが分かる。乗って回りたいと思う人より、引く人の大変さを
想像してしまう。
 
遍路石には2種類あり、一つが弘法大師の供養塔であり、もう一方が
道しるべとのことだ。遍路で言われる「打つ」はお接待のお礼に木札を
納め、お寺の柱や壁に打ち留めるから出た言葉だそうだ。遍路の基礎
知識を学んだ。
 
A室で、一番目を引いたのはやはり竹林寺の木造阿弥陀如来立像だ。
伏し目がちな穏やかな表情の阿弥陀さんだ。ところが玉眼に光が当たる
と表情が一変する。眼で表情は決まる。眼は口ほどに物を言う。
 
B室で注目は仏画。県指定文化財となっている金剛頂寺所蔵の六幅が
出陳されている。愛染明王と不動明王が一体となった両頭愛染曼荼羅図
はサントリー美術館においても観覧した。インパクトのある図像だ。正に
密教の最強ペアか?
 
高祖大師秘密縁起の四巻も弘法大師・名場面集といったものであり、興味
深く眺めた。色が鮮やかなのも良い。桓武天皇時代の遣唐使、嵯峨天皇、
淳和天皇の信任を得、更に仁明天皇の勅許で宮中に真言院を設置して、
後七日御修法を行うまでになった。留学生の空海が鎮護国家を祈るまで
の僧に登り詰める姿はドラマチックだ。真言密教が国家仏教になった瞬間
と言える。
 
C室の仏像では、木造大日如来坐像が素晴らしい。若々しく、かつ堂々と
した存在感のある仏だ。奈良・円成寺の運慶像を連想させる。この像の
眼にも光を当てて頂いた。またもや表情を一変させた。特別展のチラシ
モデルとなるに相応しい像だ。
 
D室の木造地蔵菩薩立像(六地蔵)は気持ちを和ませてくれる。笑い地蔵
と呼ばれているとのことだ。特に、向かって左から二番目の(五)地蔵は
尼さんのような雰囲気を醸し出しており、特に優しさを感じる。
 
また、湛海様と呼ばれる不動明王坐像も目に留まった。江戸時代の像には
正直、今まであまり関心を示さなかった。今回を機に、もっと注意深く見て
行こう思った。
 
懸仏の解説では、「神仏習合」、「本地垂迹思想」、「和光同塵」のお話を
された。古来日本人が持っている世界観「八百万の神」や空海が請来した
「曼荼羅」に通じるように思える。神仏に祈る心を持つことこそ今の時代に
求められているのではないか。
 
どうしても、仏像中心のコメントとなってしまった。他にもたくさん印象に
残ったこともある。感想は割愛。最後まで懇切丁寧にご説明して頂いた
淵田さんのお蔭で、楽しく有意義な時間を共有することができた。参加者
一同大満足の見仏会となった。感謝!感謝!
 
最後に淵田さんを囲み、美術館をバックに記念撮影。
(美術館受付の方にシャッターを押して頂いた。)
 
 
ご参加の皆さんから誕生祝いに昼食をご馳走して頂いた。皆さんの
優しいお気遣いに感謝。今年一年ご協力有難うございました。
どうぞ、良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いします。(合掌)
 
 

2014年12月19日金曜日

朝比奈さん「火炎光背」制作のプロセスを詳細に語る!

 
今年最後の定例会は参加者26名。久方ぶりの方、病が癒えて元気に
復帰された方のご参加等もあり、どことなくにこやかな雰囲気となった。
本日のメインテーマは、朝比奈さんが解説される「火炎光背の制作」。
その企画・作図から完成までのプロセスを詳細に語って頂く。

最初に、相良さんが當麻曼荼羅図をご披露された。相良さんは、關先生の
講演会で「迎講」をお聴きし、當麻曼荼羅を拝観のため、當麻寺を参拝され
たとのことだ。その時に購入されたものが本日ご持参の図。
當麻曼荼羅図
 
朝比奈さんは、制作された仏像や光背等を携え、朝早く家を出られたとの
こと。ラッシュで作品が損傷するリスクを回避するための対応だ。
展示頂いた像・・・
①不動明王立像(火炎光背、岩座) ②聖観音菩薩立像(光背、蓮華座)
③雲上菩薩(浮彫り)  ④弥勒菩薩半跏像
いずれも、見事な作品で、ついつい手を合わせたくなる。
不動明王立像始め諸尊像
 
ご発表はレジュメ3枚とパワーポイント(PPT)で進められた。前回のご発表
同様、大変良くまとめられた資料(レジュメ、PPT)に只々感心。
        解説の朝比奈さん      解説を聴く参加の皆さん
 
火炎光背の意味や形についての解説に留まらず、不動明王がなぜ、
火炎光背を背負っているかについてもPPTでご説明された。
朝比奈さんの研究熱心さは「仏としての不動明王の役割」を姿形で具現
しようとする仏師の姿そのものだ。
解説に使用のスライド
 
強烈な印象として残るのは、制作完了日を設定してのスケジュールだ。
さながら、納期を設定された仏師が懸命に彫る姿がイメージされた。
自らに課した課題に対し、妥協を許さない姿にまたしても感銘を受けた。
火炎光背の手順とまとめは次の通り。
火炎光背制作の手順とまとめ
 
体験談ご披露後、沢山の質問が出た。ご参加の皆さんの関心がいかに
高まったかを如実に物語っている。それにしても20㎏の材が650gまで
軽くなるとは想像できなかった。また、材の反りを防ぐために制作過程
において接着剤を薄く塗る工夫にもビックリ。
 
本日のご発表のために、ご無理されたことがございましたら、なにとぞ、
お不動さまのお顔に免じてご容赦ください。暫くはごゆっくりなさることを
お勧めします。本日までお疲れ様でした。
 
 
 
 

2014年12月18日木曜日

阿佐谷地域区民センターで講演会(2日目)開催!


12月4日(木)に引き続き2日目の講演会。前回は奈良の国宝仏について
時代別、制作技法別にご紹介した。今回は京都の国宝仏を寺院毎に
ご紹介。京都を旅行される際にぜひご参考にして頂きたい。
        会場入り口の掲示板      講演会会場の様子
 
京都における奈良時代以前の国宝仏は広隆寺2件、東寺1件(唐からの
請来)、観音寺1件、蟹満寺1件と合計5件だけ。大半は平安京遷都後に
制作された仏像。
国宝仏を所蔵される17寺院の中から、2件以上または奈良時代以前の
仏像を所蔵される寺院にスポットを当てた。(勝手に決めた基準)
       京都の寺院所蔵の国宝仏   ご紹介する寺院創建縁起
 
平安京遷都後の歴史についても第50代の桓武天皇から第60代の醍醐
天皇までの系譜を中心に側近・高僧・藤原氏(藤原北家)との関わりに注目
しながら概観してみた。(あくまで個人的な興味でざっくりと取り上げたもの
であり、妥当か?)
 
また、時代区分としての弘仁貞観時代は784年、桓武天皇の長岡京遷都
から894年、菅原道真の進言による遣唐使廃止までの期間であり、時代を
築いた人たちの足跡と言える。
 
8世紀から10世紀創建
の寺院に関わる人物
 
寺院創建にどのような歴史的背景があったかを知ることで仏像拝観の
楽しみが増すことは体験的に実感している。芥川賞作家・三田誠広氏は
この時代の小説をたくさん書かれている。仏教に造詣の深い氏の小説は
大変興味深く読むことだできる。歴史は家系図と言われている点も全く
同感である。
 
10寺院、30件151軀の仏像をご紹介した。各寺院の中で代表的な仏像
は次の通り。
 
           ①         ②          ③
 
         ④            ⑤            ⑥
 
              ⑦                ⑧
 
              ⑨                 ⑩
 
①広隆寺・弥勒菩薩半跏像 ②観音寺・十一面観音菩薩立像
③蟹満寺・釈迦如来坐像   ④東寺・不動明王坐像(五大明王のうち)
⑤神護寺・薬師如来立像   ⑥仁和寺・薬師如来坐像
⑦清凉寺・阿弥陀三尊像   ⑧浄瑠璃寺・九体阿弥陀坐像
⑨平等院・阿弥陀如来坐像、雲中供養菩薩像
⑩蓮華王院三十三間堂・千手観音坐像 
 
皆さん最後まで熱心のお聴きいただき、気持ちよく話すことができました。
今回を機にご縁が深まることを願ってやみません。(合掌)
 



2014年12月4日木曜日

「奈良・京都の国宝仏」本年2度目の講演会

 
阿佐谷地域区民センターで7月実施の「奈良・京都の国宝仏」講演会を再度
開催した。7月応募者多数のため、抽選に漏れた方々向けに開かれた。
今回もお蔭様で90席準備の会場はほぼ一杯となり、ご参加の皆さんは
熱心に聴かれていた。

 椅子席だけの会場はほぼ満席
 
本日のテーマは、「文化財保護法成立の推移」「国宝の件数」などを踏まえ、
奈良県の寺院が所蔵する天平時代以前の国宝仏にスポットを当てご紹介
した。皆さん一度や二度拝観されたことのある仏像ばかりと思う。
 
飛鳥、白鳳、天平の時代区分を横軸にし、制作技法(材質)の違いを縦軸に
してできた分類の中から、それぞれを代表する像を映像に映し、解説した。
美術史的な時代区分は諸説あり、また作品がどの時代に該当するかに
ついても議論がある。そのような不確定要素があることを前提で、ザックリ
とした話をさせて頂いた。
 
とりわけ、天平期は制作技法毎に数多くの名作があり、際立っている。
その一例を掲載すると次の通り。
  薬師寺       新薬師寺
   薬師三尊像    伐折羅大将立像
(銅造)           (塑造)
 
興福寺        聖林寺
   阿修羅立像   十一面観音立像
(脱活乾漆造)   (木心乾漆造)
薬師寺の薬師三尊像も白鳳期の像ではないかとの論争もあるようだが、
天平期の像として分類した。
 
次回は、京都の国宝仏を寺院ごとにご紹介することにしている。