10月27日(木)10時 日本橋の三井記念美術館に12名が集合。
遅れて1名加わり、13名が「松島 瑞巌寺と伊達政宗」展を観覧した。
特別展チラシ
暮らした町であり、思い出多い、懐かしい土地だ。
今回の観覧目的は3つ。第一に、33年に一度しか、お目にかかれない
秘仏「五大明王」を拝観すること。第二に瑞巌寺の来歴を確認したいこと。
三点目として、展示品を通して伊達政宗の人物像を垣間見たい。
1.五大堂 五大明王像について
三十三年に一度御開帳される秘仏で、前回は2006年に御開帳。
本来は2039年まで拝観できない。今回特別に震災復興祈念として
出開帳となったとのこと。
伊達政宗も敵地を攻めるにあたって、松島に赴き、戦勝祈願をした。
勝利の暁には堂宇を再建すると誓願し、実現した。
(図録から)
(中央)不動明王坐像
(東)降三世明王 (南)軍荼利明王
(西)大威徳明王 (北)金剛夜叉明王
第一印象は身体に比べ、顔が大きく、幼児のような体型をしている
ように見えた。恐ろしい明王の雰囲気、忿怒相ではなく、親しみや
温かみを感じた。金剛夜叉明王は特に笑っているようにも見えた。
六足尊・大威徳明王の左足が三段に重なっている姿は初めてお目に
かかる。うっかりしていると、気づかないで見落とす。不動明王の台座・
瑟瑟座(しつしつざ)が少し低いように感じ、数えてみたら五段だった。
通常は七段のところが二段少ない。
理由は何だろうと想像する。後補でそうなったのか、厨子に安置するため、
総高を調整したのだろうか?
五大明王とも、平安時代、10世紀後半の作。ケヤキの一木造り
(頭体幹部が一材)で内刳りは施していないとのこと。干割れした様子も
見えず、保存状態が良い。
お前立 不動明王三尊像
個人的には、お前立 不動明王三尊像の造形が気に入っている。
こちらの不動明王は、天地眼(てんちがん)や歯で唇をかむ形など
「不動十九観」に基づいた安然様(あんねんよう)であり、不動明王らしい。
また脇侍の二童子、
矜羯羅童子と制吒迦童子の表情が対照的で面白い。
鎌倉時代、13世紀の作、針葉樹の一木割矧造(わりはぎづくり)。
2.瑞巌寺の来歴
東北の名刹は慈覚大師円仁を開山とする寺が多い。、東北地方では、
お大師さんといえば、弘法大師ではなく慈覚大師のことを言うそうだ。
瑞巌寺も元々、円仁が開いたお寺が時代と共に宗派が変遷して来た。
「天台宗の延福寺」が「臨済宗建長寺派の円福寺」となり、現在は、
「臨済宗妙心寺派の瑞巌寺」となった。延福寺は(比叡山)延暦寺との
対比でつけた寺名のようだ。
瑞巌寺以前の寺宝として「天台由緒記」や「松島山円福禅寺住持次第」の
展示を目にした。そこには、慈覚大師円仁、大覚禅師蘭渓道隆の名前が
掲載されている。
蘭渓道隆は鎌倉幕府5代執権の北条時頼が建長寺の開山として迎えた
中国僧。円福寺と建長寺が繋がることに興味が湧く。
「天台由緒記」部分 「円福寺住持次第」部分
慈覚大師(円仁)の名 大覚禅師(蘭渓道隆)の名
円福寺の開山は法身性西(ほっしんしょうさい)、二世が蘭渓道隆。
二人の頂相(ちんぞう)が展示されていた。法身性西の名は今回の展覧会
で初めて知った。法身性西は、天台宗から臨済宗に改宗した時の初代住持
(開山)になる。
法身性西像 蘭渓道隆像
更に、時代が過ぎ、伊達政宗に円福寺の復興を勧めた僧が正宗の師でも
あった妙心寺派の虎哉宗乙(こさいそういつ)。そして、この時に寺名を
瑞巌寺と改めて、宗派も妙心寺派となった。
僧の生存した年から3寺院の時代を整理してみると・・・
円仁(794~864)、 蘭渓道隆(1213~1278)、
虎哉宗乙(1530~1611)となる。
平安初期、鎌倉中期、安土桃山から江戸初期
3.伊達政宗について
伊達政宗と言えば、派手ないでたちで有名であったようだ。
伊達男も一説ではそこから来ているとも言われる。伊達政宗の書を見て、
武将でありながら、文人でもあったのだろう思えた。何と流麗な文字
だろうか。
「伊達政宗和歌詠草」は図録の解説によると、五年がかりの大工事で竣工
した瑞巌寺方丈の祝儀があり、寺の末永き繁栄を祈願して詠んだ和歌との
こと。
「松嶋乃枩農齢尓此寺の春恵佐可へなむ年ハ婦るとも」
「まつしまの まつのよわいに このてらの すえさかえなん
としはふるとも」
目を引いたのは二体の尼僧像。正宗の正室と子の五郎八(いろは)姫。
この姫は徳川家康の六男と結婚した。「白い肌、朱く彩られた唇が五郎八姫
の優雅さと気品を表し、眼差しや鼻梁のとおった顔立ちに、父正宗の面影を
見ることができる」と図録解説にある。時代に翻弄された人生を送ったこと
だろうと思いながら眺めた。
伊達政宗和歌詠草 天麟院五郎八(いろは)姫像
観覧後は、ビデオを視聴し、その後館内のレストランで昼食歓談をした。
今回も楽しいひと時となった。