仏像探訪予定が順調に進み、八王子市郷土資料館への
訪問が午前中となった。
訪問目的は、白鳳期の小金銅仏を拝観すること。
この像は真覚寺の薬師如来倚像であり、現在、
郷土資料館に寄託されている。
像高がわずかに22.5cmと小さい。八王子市指定文化財と
なっている。入り口近くのガラスケースに入り、展示されている。
白鳳仏と推定できる特徴として童顔であること、倚像であること
が挙げられる。深大寺の釈迦如来倚像を小ぶりにしたような像だ。
ちょっと不自然に感じるのは、右手が与願印で薬壺を持っている
ことと、左手が手の甲を上にし、指先を下げる降魔印(触地印)を
していること。もしかして、手は後補かもしれない。
薬師如来が薬壺を持つことが一般的になるのは平安時代に入って
からとされている。
白鳳期では釈迦や薬師の区別がつきにくい。
通常の印相は、右手が施無畏印。指先を上にして、掌を前に向ける。
左手が与願印。また、降魔印をするのは、釈迦か弥勒が一般的と思う。
以上のことから、印相が不自然であり、後から補って修復したのでは
ないかと思われる。
一方、与願印を降魔印にしたり、薬壺を持たすことは可能だろうが、
施無畏印を与願印変えてに修復するには腕の形状が破たんするのでは
なかろうか。いろいろ考え、疑問を残しながら、郷土資料館を後にする。
郷土資料館に寄託された真覚寺・薬師如来倚像
昼食の時間となり、予約されていたお店に到着する。
案内されたのは結婚式場披露宴会場のような広い部屋。
円卓が3つ並べられている。各テーブルに分かれて着席する。
平日の昼食時とあって、リーゾナブルな値段で、美味しい食事を
頂くことができた。
歓談して分かったこと。花南仏像の会は発足して20年も続いて
いるということ。講師は不肖私が3代目であること。会のメンバーも
時代と共に変わったことだろう。
20年も存続するとは、会を大事に思い、続けてほしいと願う人達が
いたからにほかならない。
そのような会に加えて頂いたことを大変光栄に思う。
最後に向かった寺院は極楽寺。ここでの見どころは市指定文化財の
阿弥陀如来像。「歯吹きの阿弥陀如来」や「鼻取如来」と言われる伝説を
持った像だ。
到着するや、山門を囲む塀と山門の間から見える参道に驚く。
極楽寺は芝・増上寺を本山とする浄土宗の寺院。山門には増上寺大僧正が
揮毫された「寶樹山」の扁額が掛かっている。
山門 扁額
木々に囲まれた参道 境内の案内図
鐘楼 本堂
本堂近くに木造阿弥陀如来立像の解説板が立っている。
そこに鎌倉末から室町時代にかけての「安阿弥」作と伝えられる
との解説がある。安阿弥とは仏師・快慶のことであり、鎌倉初期の
人である。作風が「安阿弥様(あんなみよう)」であれば、分かるが、
快慶作と言われると戸惑う。
ご本尊についての解説文 阿弥陀三尊像
歯吹きの様子は残念ながら、確認することは難しかった。
また、右手斜めの位置から厨子の隙間を通して勢至菩薩像を
拝観できた。前かがみになって合掌するお姿はいかにも、
来迎の様子を反映している。
左脇侍(中尊阿弥陀如来の左側に立つ)の観音は
残念ながら視界に捉えることができなかった。
厨子の中に三尊像が安置され、更にその外側にも
脇侍の観音・勢至が安置されている。
我々が拝観している間、ずっと見守っていたお坊さんに尋ねた。
「あの阿弥陀さんは快慶の作ですか?」 回答は予想通り、
「安阿弥様」であって、快慶作ではありません。
ご本尊・阿弥陀如来立像 右脇侍・勢至菩薩立像
須弥壇の後ろにも仏像や高僧像が並ぶように安置されている。
地蔵菩薩の仏頭がひと際目立っている。また、善導大師と法然上人の
像がご本尊の右側と左側に分かれ祀られていた。
善導は法然の師匠に当たる中国僧。法然は浄土宗の開祖。
この二人を祀ることは、浄土宗寺院の基本のようだ。
地蔵菩薩の仏頭 法然上人像
拝観を終え、参道を戻る皆さん
いずれも、大変印象深いお寺であり、仏像でした。
どうぞ、自由にご覧下さいと、立ち合うこともされない鷹揚な常楽寺。
ご住職のお出迎えと丁寧な解説をお聴きできた清鏡寺。
黙ったままの立ち合いで、自由に拝観し、質問すると回答がある
極楽寺と、三者三様の対応にそれぞれの良さを感じた。
3つのお寺とも歴史的変遷が面白そうだ。常楽寺と皇室、
清鏡寺と北条氏、極楽寺と徳川家と関係について調べて
みたいと思った。
(常楽寺では石造五重塔に「菊の御紋」を、
清鏡寺では本堂のガラス戸に「三つ鱗」を、
極楽寺では塀の屋根瓦に「葵の御紋」を
見かけた。)
予定時刻の4時より少し前に花小金井に戻った。
名残惜しくも、仏像探訪バスツアーはエンディングを
迎えることとなった。
バスの運転手さんの「多聞天のような敏感な耳」と
サービス精神のお蔭で楽しさも増したのではないか
と思う。
最後に、竹田会長始め、会員の皆様には
大変お世話になりました。
改めてお礼を申し上げます。
次回の仏像探訪にもぜひ、ご一緒させて頂きたいと
願っております。(合掌)