1.准胝観音の「准胝(じゅんてい)」とは、どんな意味か?
「准胝」とは、サンスクリット語、「チュンデー」の音写で、
「清浄(しょうじょう)=清らかでけがれのない」の意。
<速水侑監修 日本の仏 青春出版社より>
従って、漢字から意味を推し量ることはできない。阿弥陀如来
は「アミタ―バ(無量光)」「アミターユス(無量寿)」の音写
で「阿弥陀」となった。音写文字の漢字に意味は無い。
音写の仏様の例は下記の通り(❶、❷)。
❶音写の仏様① ❷音写の仏さま➁
2.百観音霊場(西国33、坂東33、秩父34)寺院で
ご本尊が准胝観音は何か寺?
馬頭観音同様、百観音霊場(❸)の中にあっては2か寺だけと
少ない。西国霊場では京都・醍醐寺、秩父霊場では埼玉・語歌堂
(ごかのどう)が准胝観音をご本尊としている(❹)。
❸百観音霊場のご本尊 ❹観音霊場の准胝観音像
3.准胝観音の特徴
准胝観音の特徴は、千手観音と同様に多臂(腕が何本もある)。
4、6、18臂など、何通りもの様式があるようだ。作例の多い
のが18臂像(❺)。腕の数だけを見ると、千手観音と見間違う。
多臂像として共通の千手観音と比較したのが❻の画像。最大の
違いは、胸前で組む印相。准胝観音が説法印であるのに対して、
千手観音は、合掌している。胸前の印相をチェックすると識別
し易い。
❺准胝観音像の特徴 ❻准胝と千手の比較
4.准胝観音が祀られた経緯 ~ 高野山と總持寺の場合~
高野山の壇上伽藍には「准胝堂」が金堂の北西に建つ(❼)。
この准胝堂は、空海が高野山を開く際に、建立したそうだ。弟子
たちが得度する時の本尊として祀った。清浄な心を持つことを
求めたのだと思う。
醍醐寺に准胝観音が祀られるようになったのは、開祖・聖宝
(しょうぼう 空海の孫弟子)が高野山に倣って、准胝観音を
勧請したことによる。
准胝観音は密教寺院だけでなく、禅宗寺院(曹洞宗、臨済宗、
黄檗宗)でも良く祀られる。横浜市鶴見区の總持寺衆寮(しゅ
りょう)にも准胝観音が祀られている(❽)。
衆寮とは、座禅をする僧堂に対し、僧が経や語録を読み、
修行を深める自習用の建物のことを言う。これを一般参禅者
に開放している。准胝観音が参禅者の姿を見守る。
❼高野山壇上伽藍・准胝堂 ❽總持寺衆寮の准胝観音像
5.六観音の中の准胝観音
六道の救済者として、各道に担当の観音菩薩が割り当てられて
いる(❾)。准胝観音は人間道の救済者となっている。しかし、
これは真言宗においてであり、天台宗では不空羂索観音となる。
更には、人間道の観音菩薩を共に入れて、七観音とする信仰
も出て来た。七観音巡りとして流行し、三十三観音霊場巡りへ
と発展して行ったとのことだ。
❾六道と六観音、観音巡り
【観音シリーズ】 つづく