<前号(3.羽賀寺)から続く>
【12月9日(月)】
今回の探訪で個人的に一番楽しみにしていたのが、明通寺の参詣。
国宝の堂塔や重文の仏像が拝観できる。それ以上に、ご住職の
中嶌哲演(なかじまてつえん)師にお会いできることが何よりの
楽しみだ。
中嶌師については、空海研究会に参加させて頂いた直後、2013年
6月の講義で福田先生がお話しされた。その時に初めて知った。
仏教者が原発反対の社会活動をされる姿に強く感銘を受けた。
昨年3月、NHKEテレ『こころの時代』「隠れ病む人々と歩む」
と言うタイトルで中嶌哲演師の活動が放映され、ますます関心を
寄せることとなった。2018年4月8日の本ブログで番組視聴の感想
をアップした。
朝9時に明通寺到着となるよう、8時半過ぎ、宿を後にした。
4.明通寺(みょうつうじ)
駐車場にバスを留め、坂道を歩く。「棡橋」と書かれた、朱色
の橋が架かる(①)。「ゆずりばし」と読む。明通寺の山号も
「棡山(ゆずりざん)」。棡橋を渡ると階段が見え、その上に
山門がある(②)。(「棡山」命名の理由は④)
山門を抜け、更に坂道を登る(③)。参道には明通寺の縁起や
文化財が書かれた案内板(④)が立つ。
①棡橋(ゆずりばし) ②山門(仁王門)
③参道の坂道 ④明通寺の縁起
拝観受付に行くと、ご住職が待機されていたように、出て
来られた。受付を済ませ、直ぐに本堂(⑤)へ案内された。
本堂は、鎌倉時代中期に再建され、昭和28年、新国宝に
指定されている。
本堂は単層入母屋造りの檜皮葺。大陸様式を摂取しながら
和様美を具えた優秀な密教建築と言われる(⑥)。
⑤国宝・明通寺本堂 ⑥本堂の解説板
本堂内陣(⑦)に入る。福田先生がご挨拶と中嶌ご住職の
ご紹介をされた。「尊敬する生き仏のような方です。」
続いて、ご住職から明通寺のご説明があった。創建は真言宗
の開宗より古い。806年、坂上田村麻呂公が蝦夷の人達の
冥福を祈り、すべての人々の安穏と幸福を願い建立した(④)。
明通寺縁起では「孤魂窮鬼(ここんきゅうき)」「孤独の
魂、窮地に陥れられた鬼」と言う四字熟語が書かれている。
その「孤魂窮鬼」の鎮魂、冥福を願ってという文言が出て
くるそうだ。
次に、仏像について解説された(⑧⑨)。国指定の文化財
になっている仏像は、正面の3体(⑨)と下のお堂にある
不動明王(⑭)の合計4体。
中尊の薬師如来は33年に1度ご開帳の秘仏を、先代の
ご住職がいつでも拝観できるように改めたとのこと。
お蔭で、お目にかかることができた。有難い。
脇仏の降三世明王(ごうざんぜみょうおう)と深沙大将
(じんじゃだいしょう)は、昨年、東京国立博物館開催の
「仁和寺と御室派のみほとけ」特別展で拝観した。
この三尊形式は、極めて珍しく、今まで拝見したことが
ない。いずれも、藤原末期の像であり、ヒノキの一木造り
であること、脇仏が阿吽の口をしていることから当初から
の三尊像であることは間違いないようだ。
⑦本堂内陣 ⑧本堂須弥壇
(ネットから)
⑨本尊・薬師如来像と脇侍像
(展覧会図録写真から)
本堂でのご説明を拝聴した後は、国宝の三重塔をバックに
記念撮影となった。
➉記念撮影写真
記念撮影後は、国宝建造物の本堂や三重塔の秀麗な造形美
を鑑賞しながら、皆さんシャッターを押した(⑪⑫)。
本堂前の池には色鮮やかな錦鯉が優雅に泳いでいた(⑬)。
暫し楽しんだ後、下にある客殿で歓談しましょうとご案内
された(⑭)。
⑪国宝・三重塔 ⑫本堂を眺める皆さん
⑬本堂前の池の鯉 ⑭本堂から客殿へ向う
客殿の仏間には、あと一つの重要文化財、不動明王像が
祀られている(⑮)。この不動明王像は羽賀寺所蔵の
千手観音像、毘沙門天像と共に、別のお寺、松林寺(廃寺)
に三尊像として祀られていたようだ。(イメージ⑯)
⑮客殿仏間の不動明王立像 ⑯かつて三尊像形式で祀られる
〇明通寺ご住職・中嶌哲演師との交流、意見交換
座卓の周りに座った。最初に、中嶌師から活動の状況と
何が問題かについてご説明があった。資料も沢山ご準備
され、熱いお気持ちが伝わってくる。
⑰意見交換会の様子
ガリ版刷りの「鈴声」第一号は中嶌師の活動原点であり、
一番注目した。1968年7月9日から今日まで、実に
51年間も原発と向き合って来られた姿勢に頭が下がる。
福島での原発事故以後、ドイツでは「脱原発倫理委員会」
が設置されたと言う。日本では「倫理」の発想が全くない。
火力発電所と原子力発電所の設置場所の違いや、電力の
受給関係など、何が問題かを浮き彫りにして頂いた。
自分に何ができるだろうかと自問自答しながら、拝聴した。
参加者の皆さんから、意見、感想などの発言が多くあり、
充実した交流がなされたように感じた。
福田先生が言われた。「お寺は、建物や、仏像でなく、
住職で決まる。」中嶌師にお会いし、改めて、強く感じた。
●妙楽寺(みょうらくじ)
残念ながら、お寺の手違いで拝観できなかった。
(後程、携帯にお詫びの電話があった)
境内だけ歩いた。二十四面千手観音菩薩像には
お目にかかりたかった。
妙楽寺の山門 妙楽寺の縁起
<続く>