2019年9月15日日曜日

鎌倉・宝戒寺の諸尊像を拝観!


9月14日(土)総勢20名で、鎌倉の宝戒寺を訪れた。
JR新宿駅構内にあるスーパー成城石井前に、8時50分集合。
9時13分発の湘南新宿ラインに乗車し、鎌倉へ向かった。

❶車窓に大船観音のご尊顔   ❷鎌倉観光案内図(部分)
鎌倉駅到着は10時17分。大船駅では車窓から大船観音の慈悲深い
ご尊顔(❶)を眺めた。鎌倉駅からは、若宮大路と並行する小町大路
を歩く(❷)。小町大路は予想より車が多く、歩道も狭く、ゆったり
した気分で歩けない。残念‼

小町大路を宝戒寺へ向かって歩くと、右側に日蓮辻説法跡(❸、❹)が
目に入る。鎌倉には、日蓮宗の寺院も多くある。
❸日蓮辻説法案内板      ❹日蓮辻説法跡

宝戒寺の参道(❺)は趣がある。宝戒寺の縁起を記した看板(❻)が
立っている。「滅亡した北条氏の霊を弔うため、また修行道場として
後醍醐天皇が足利尊氏に命じ、北条氏の屋敷があったとされるこの地
に寺を建立させた」とある。
❺宝戒寺の参道       ❻宝戒寺の縁起

受付で拝観料を納め、境内に入る。お寺の概要を記したしおりを頂く。
宝戒寺はいくつもの霊場札所(❼❽)となっている。
 鎌倉二十四地蔵尊霊場 第一番札所
 鎌倉三十三観音霊場  第二番札所
 鎌倉江の島七福神   毘沙門天
 鎌倉六阿弥陀霊場   第五番札所
従って、奉安仏も多く安置されている。
<宝戒寺のしおり>
❼霊場札所案内      ❽奉安仏の紹介

いよいよ、本堂(❾)をお参りする。本堂内には多くの尊像が
祀られている。安置されている仏像は❿の通り。大聖歓喜天堂が
改修中とあって、阿弥陀如来や十一面観音まで本堂で拝観できた。

ご本尊の子育経読地蔵大菩薩(⓫)は凛々しい。この像は
重要文化財に指定されており、文化財としても価値ある。
本堂内で諸尊像をじっくり拝観しながら、穏やかな時間を
過ごした。

宝戒寺は天台宗寺院であり、真言宗の開祖、弘法大師像
(仏像配置図⑭)を祀るのなぜか。お坊さんに質問すると、
「先代の住職は、弘法大師が好きだったから」とのご回答。
他宗派の僧侶にまで敬愛されるとは、弘法大師・空海の
偉大さを改めて認識した。
❾宝戒寺本堂       ❿本堂仏像配置図
⓫子育経読地蔵大菩薩

拝観を終えた後、本堂の前で記念撮影(⓬)。皆さん笑顔が
素晴らしい。
⓬本堂の前で記念写真
(筆者撮影)

境内を散策して歩く。大聖歓喜天堂(⓭)は改修中。聖徳太子堂
(⓮)や北条高時を祀る徳崇大権現堂がある。
「萩の寺」と呼ばれるようにハギの花(⓯)が咲き始めていた。
また、二匹のリスが戯れる様子(⓰)も目撃した。
      ⓭改修中の大聖歓喜天堂    ⓮聖徳太子堂

⓯境内に咲くハギの花   ⓰樹上で戯れるリス(〇印)

宝戒寺を後にし、次に向かった先は、「東勝寺跡」「腹切りやぐら」。
歩いて来た小町大路を少し戻り、左折すると東勝橋(⓱)に出る。
橋の下は滑川(⓲)が流れ、風情ある景観だ。

先に進むと、通行止め(⓳)となっており、残念ながら、断念。
昼食できる店を探しながら、鶴岡八幡宮方面へ向かった。運良く、
20名全員が座れる店を直ぐに見つけた。
⓱東勝寺橋を渡る      ⓲橋下を流れる滑川

⓳東勝寺跡、腹切りやぐらへの道は通行止め

暑くもなく、天候にも恵まれ、霊場札所のほとけ様を拝観でき、
全員、一緒に昼食を取れるとは、幸運な充実した一日となった。
20.舌鼓を打ち始めたテーブル  21.歓談しながら待つテーブル

昼食後、解散とし、後は自由行動。鎌倉をもっと楽しもうとされる
人達は、次へ向かった。




2019年8月30日金曜日

『完訳 ブッダチャリタ』を読む


釈迦の全生涯にわたる伝記『ブッダチャリタ』❶(漢訳
「仏所行讃」)を読んだ。大変読み易い文章で、興味深く
読み終えた。次から次と名場面が展開し、飽きる間が無い。

読むキッカケとなったことは、所属する「空海研究会」の師、
福田亮成先生からご紹介・推奨があったからであり、また、
釈迦の伝記を、一度きちんと読んでおきたいと思った次第。
❶完訳ブッダチャリタ
(講談社学術文庫)

巻末掲載、馬場紀寿氏の解説に、「訳者にインド文学、
インド思想、インド仏教研究の碩学4人を揃え、最も
望ましい条件を満たした」とある。
即ち、横山雄一、小林信彦、立川武蔵、御牧克己の四氏。
読み易い理由は、訳者が素晴らしいと言う事が分かり、納得。

訳者のお一人、横山雄一氏によると、ブッダの全生涯にわたる
伝記で、成立年代も古く、半ばに及ぶ原サンスクリット本が残り、
チベット訳や漢訳も現存するのは『ブッダチャリタ』だけとの
ことだ。

著者のアシュヴァゴーシャ(馬鳴 めみょう)は、高い教養と
学識を持ち、仏教詩人として大成された人物。紀元後2世紀頃に
活動され、同年代のクシャーナ朝カニシカ王に尊敬されていた
とのことだ。

今回の読書を通して、アシュヴァゴーシャがどのような人物
だろうかと、興味が深まった。






2019年8月12日月曜日

杉並区阿佐谷の世尊院を参拝!


8月10日(土)10時、杉並区阿佐谷の世尊院を参拝した。
正式の寺名は阿谷山世尊院正覚寺(あこくさん せそんいん
しょうがくじ)。真言宗豊山派の寺院。

猛暑にも関わらず、参拝者は24名と大人数となった。
ご住職、副住職にはお出迎えまでして頂き、大変恐縮する。

2階本堂にご案内される。本堂は、すでにエアコンで涼しく
なっていた。須弥壇を正面にして左側に、椅子が並べられて
おり、参加者は着席した。

副住職から世尊院の縁起等を記した「世尊院のしおり」と、
般若心経などのお経の書かれた「おつとめ」を頂く(❶)。
❶「世尊院のしおり」と「おつとめ」

「おつとめ」を見ながら、ご住職に倣って般若心経を唱えた。
更に、ご住職から「震災後の不思議な話」(宇田川敬介著)
の一部が紹介された。震災で亡くなった人の慰霊と同時に、
「死後を考え、今を生きる」生き方の大切さをご教示頂いた。

法話の後は、ご本尊の不動明王像を間近で拝観させて頂いた。
護摩壇の奥に須弥壇があり、ご本尊が安置されている(❷)。
ご本尊は矜羯羅童子、制多迦童子の二童子像を脇侍にして、
中央に立つ。
<❷❸は「世尊院のしおり」から>
❷本堂の内陣        ❸ご本尊の不動明王像

ご本尊の不動明王立像は室町時代末期の制作で像高122㎝と
杉並区内において、大きな仏像とのことだ。黒光りし、堂々と
した体躯。二童子像の表情、持物、彩色が対照的になっている。
三尊像としてバランスが良い。

不動、二童子像の脇に降三世明王像、軍荼利明王像が並ぶ。
また新たに2体の像を造立されると、ご住職がお話しされた。
大威徳明王像と金剛夜叉明王像とで五大明王にされるものと
思われる。

弘法大師像、興教大師像、真言八祖の図像、両界曼荼羅図等、
本堂内は密教寺院ならではの設えとなっている。諸尊像を
拝観させて頂いた後は、客殿にご案内された。

客殿には、川崎小虎(かわさき しょうこ)画伯作「佐保姫」
が掲示されているとご住職からご説明があった。淡いピンク色
が何とも言えない清楚な感じを醸していた。

本堂と客殿を繋ぐ廊下壁に掛る千手観音図像も素晴らしい。
千手が光背のように描かれており、強い印象を残した。

客殿を見学した後、中杉通りを挟んで反対側に建つ観音堂に
ご案内頂いた。内陣に入り、ご本尊の聖観音菩薩像(❹)や、
両脇に安置された閻魔大王像(❺)、奪衣婆像も拝観した。

聖観音菩薩立像は室町時代初期の作で、杉並区の有形文化財
に指定されている。像高62.5㎝の秘仏であり、御開帳日
が決まっている。今回、特別に御開帳頂いた。大変有難い。
<❹❺は「世尊院のしおり」から>
❹聖観音菩薩像       ❺閻魔大王像

杉並区教育委員会発行の「杉並区指定登録文化財」解説書に
よると、この聖観音菩薩立像は、「専門仏師の手による秀逸な
作品であり、室町時代の中でも優れた遺品」とある。

煤けた感じの聖観音と、彩色鮮やかな閻魔大王、不気味な雰囲気
の奪衣婆の対比が興味深い。観音堂では参加者の疑問、質問に
ご住職がお応えになられた。

〇観音護摩供…毎月十七日午後二時~三時
〇観音経読誦会…第一・第三日曜日午前九時~十時
開催日時についてご住職からお知らせがあった。

機会を作って、ぜひ一度参加してみたい。本日参拝者の中で、
参加希望者がいるのでは?

❻記念写真(筆者撮影)
観音堂を参拝後、ご住職を囲み、記念撮影(❻)をした。
その後、もう一度、本堂のある境内へ移動して、石造遺物
を見学した。

川崎小虎画伯の筆塚(❼)があった。娘婿の東山魁夷画伯
による揮毫とのことだ。お二人の関係を初めて知り、改めて
川崎小虎画伯の偉大さを再認識した。
❼川崎小虎画伯の筆塚
(ネットから)

ご住職、副住職から、丁寧なご対応を頂き、心に残る参拝と
なった。また、お菓子まで頂戴し、お心遣いが有難い。

なお、今回の世尊院参拝は、今井さんの取り持つご縁で実現
の運びとなった。今井さん有難う。

昼食は、清水さんに予約して頂いた中華料理店で20名が
ワイワイガヤガヤ舌鼓を打った。




2019年7月14日日曜日

東博「奈良大和四寺のみほとけ展」を観覧!


7月13日(土)東博「奈良大和四寺のみほとけ展」を観覧した。
総勢21名で訪れた。個人的には今回が3度目の訪問となる。
本館11室の展示であり、満70歳以上は無料となっている。

見どころは室生寺の国宝仏像2体。PRチラシ(❶)に掲載の
釈迦如来坐像と十一面観音菩薩立像が注目の的となっている。
土門拳、入江泰吉、小川光三、三好和義と著名の写真家が挙って
撮影した名品。
❶特別企画展PRチラシ

四寺の所在地やご本尊は❷、❸の通り。奈良県の北東部に位置し、
飛鳥時代には政治の中心地「ヤマト」と呼ばれたエリアに当たる。
岡寺を除く三寺は、複数回訪れたことがある馴染みの寺院。

四寺とも創建にまつわる物語を持つ古刹である。いずれも神聖な
山間に建つ格式の高い寺院。ご本尊は、なぜか皆、巨大な像。
(像高、総高は❸に表示)
  ❷四寺の所在地・宗派     ❸四寺のご本尊

展示作品の件数はわずかに15件。内訳は❹の通り。展示室の作品
配置図(❺)を手許にし、番号順に観覧した。15件中、国宝が4件、
重文が9件と文化財的価値の高い作品が多い。

❹展示作品リスト     ❺展示室の配置図

入室して、最初に目にするのは、長谷寺の十一面観音菩薩立像(❻)。
とても銅造とは思えないような造りに感心する。寄木造りの技法を
模して各部を別鋳しているとのこと。
 ❻長谷寺・十一面観音菩薩

長谷寺のもう一体、十一面観音菩薩立像阿弥陀如来立像(❼)
は、いずれも穏やかな雰囲気を醸し出している。造形的に好き
な仏像に入る。❻と❼の十一面観音を比較しながら眺めるのも
面白い。いずれも長谷寺式十一面観音となっている。定朝様の
阿弥陀如来は、仏様らしい仏で気に入っている。

岡寺の像(❽)では、菩薩半跏像が、ご本尊の胎内から発見
されたとの言い伝えが興味深い。天人文甎てんにんもんせん)
は、何のため、どのように制作されたか想像を巡らす。
釈迦涅槃像は日頃、見かけないだけに、まじまじと眺めた。

❼長谷寺・十一面観音菩  ❽岡寺・菩薩半跏像
             /阿弥陀如来    /天人文甎/釈迦涅槃像

いよいよ、国宝の仏像(❾)とご対面する。岡寺の義演僧正坐像
八の字の眉、垂れ目の顔立ちは、穏やかな精神を感じさせる。指先
に、木心乾漆造の精緻さが表れていた。

室生寺の釈迦如来坐像は、いろんな角度から眺めた。土門拳が絶賛
する「日本一の美男子」はどこから見ても、美しい。翻波式衣文
(ほんぱしきえもん)と両手の曼網相(まんもうそう)が目に付く。

反対側には長谷寺の像3体(❿)が並ぶ。地蔵菩薩は錫杖を持って
いない。「論議地蔵」呼ばれ、長谷寺の学僧に信仰されたそうだ。
雨宝童子難陀龍王は共に雨を司どる神。これだけ彩色も残り、
印象的な造形の両像が、長谷寺ではご本尊の影に隠れ、うっかり
見落とす。
❾岡寺・義演僧正坐像/     ❿長谷寺・地蔵菩薩立像
室生寺・釈迦如来坐像     /雨宝童子/難陀龍王

展示室正面の壇には、室生寺金堂の像が4体並んでいる。室生寺
金堂は⓫⓬のように、仏像が配置されている。

室生寺の信仰として小川光三氏が次のようにコメントしている。
『奈良時代の末期、この幽邃な山地で山部親王(後の桓武天皇)
 病気平癒の延寿法が行われ、これに卓効のあったことから国家
 のために建立されたのが室生寺で、金堂は古くは根本堂と云い、
 本尊として東方薬師瑠璃光如来像(近世になって釈迦如来と
 される)を安置、脇侍に十一面観音像と地蔵菩薩像を置くと
 いう三尊形式であった。これを現在のような五尊にしたのは
 近世のことであるが、・・・』
⓫室生寺金堂 仏像配置図 

 ⓬室生寺金堂 諸尊像   ⓭室生寺・十二神将立像

十二神将像巳神像酉神像)は像高約1mの立像(⓭)。特に
巳神像のポーズは何となくユーモラス。眩しくて手をかざすのか、
遠方を眺めるポーズなのか? 守護神だけに、見張りをしている
姿と思う。

本展示の一番は、十一面観音菩薩立像(⓮)。会津八一の短歌に
「うるわしく ほとけいまして、むなだまも ただまもゆらに
 みちゆかすごと」とある。乙女の麗しさを感じさせる像だ。
横から眺めると、腰部のボリュームや腕の太さなど意外と逞しい。

十一面観音菩薩と対に並ぶのが地蔵菩薩立像(⓮)。この地蔵は、
光背と合っていない。十一面観音菩薩像の尊顔が光背の円中央に
位置するのに比し、地蔵菩薩の場合は、円中央よりずっと低い
位置にある(⓯)。この光背にぴったり合うのが室生寺の近くに
ある安産寺の地蔵菩薩像と言われている(⓯)。
⓮室生寺・十一面観音菩薩   ⓯地蔵菩薩の光背
           /地蔵菩薩

最後に、安倍文殊院・文殊菩薩像の像内納入品を眺めた。納入品
そのものより、快慶が制作した文殊菩薩像の像内に納められていた
と言う事に関心が高まる。
⓰安倍文殊院・文殊菩薩
像内納入品

ゆっくり観覧した後は、折角の機会であり、本館2階の展示物
も観覧した。更には、中華料理店で昼食を取りながら歓談した。




2019年6月7日金曜日

三井記念美術館「円覚寺の至宝展」観覧


5月11日(土)、23日(木)の2回、「円覚寺の至宝展」を
観覧した。本展覧会は江戸時代の大用(だいゆう)国師没後200年、
明治時代の釈宗演(しゃくそうえん)老師没後100年を記念し、
開催されている。二人とも、円覚寺興隆に功績のあるお坊さん。

展覧会場に掲示の看板(①)には開山・無学祖元(むがくそげん)
坐像と山門の写真が映っている。円覚寺の境内は、縦一列に並ぶ
伽藍と多くの塔頭寺院がある。(②)

①館内に掲示の看板    ②円覚寺境内伽藍と塔頭

鎌倉仏像の特徴と言えば「宝冠釈迦如来」「法衣垂下(ほうえすいか)」
「土紋(どもん)」と「頂相(ちんそう)彫刻」などが挙げられる。

1.宝冠釈迦如来像(③)
  宝冠を被り、菩薩像のような釈迦如来像は、毘盧遮那仏と同じ
  存在のようだ。釈迦如来は、三身説において、応身(おうじん)。
  この世で悟り、人々の前に現れた仏を意味する。

  一方、宝冠釈迦如来は「法身(ほっしん)」、宇宙の真理そのもの
  となる。大日如来も法身仏。大日如来が菩薩のように飾っている
  ことと同じ。いわば、如来の中の如来、キング オブ キングか。
  三身説のあと一つは報身(ほうじん)。誓願を立て、修行の結果
  成仏した阿弥陀如来や薬師如来のこと。

  通常、釈迦如来像であれば、脇侍は文殊菩薩と普賢菩薩もしくは
  迦葉と阿難となる。禅宗寺院の場合は後者が多いように思う。
  円覚寺仏殿の宝冠釈迦如来の場合、④の通り、梵天と帝釈天が
  本尊脇侍となっている。これも、通常の釈迦如来とは違う。
③塔頭の宝冠釈迦如来坐像 ④本尊脇侍 梵天立像・帝釈天立像

  禅宗寺院では開祖や開山の尊像が多く造られ、祀られている。
  また、観音菩薩、地蔵菩薩と言った、庶民信仰の仏像も多い。
  (⑤、⑥)
⑤達磨大師坐像(仏殿) ⑥観音・地蔵菩薩立像(開山堂)

2.頂相(ちんそう)
  頂相とは禅僧の肖像画や肖像彫刻のことを言う。今回の見どころ
  の一つが、頂相。お寺を参詣しても、普段お目にかかれない像が
  展示されている。

  建長寺開山の蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)、円覚寺開山の
  無学祖元(⑦)は中国から来られた禅僧。無学祖元の弟子・
  高峰顕日(こうほうけんにち)、高峰顕日の弟子・夢窓疎石
  (むそうそせき)(⑧)は共に日本人の禅僧。

  いずれの禅僧も、今にも口を開き、語りかけて来るような表情を
  している。俳人の長谷川櫂氏が頂相と対面した時の感想を記事に
  されている。(⑨)

  「生身の禅僧たちの顔はみな苦悩の表情をたたえていた。(中略)
   全宇宙でもっとも悩み、苦しんでいるのが私であるかのように。」
⑦蘭渓道隆坐像、無学祖元坐像  ⑧高峰顕日坐像、夢窓疎石坐像

⑨長谷川櫂氏の寄稿記事

3.観音菩薩像、地蔵菩薩像、阿弥陀三尊像、伽藍神
  観音菩薩像(⑩)、地蔵菩薩像(⑪、⑫)の展示も多い。
  東慶寺の観音菩薩立像は、尼寺・太平寺(廃寺)の本尊。
  土紋の貼られた衣が目に付く。

  遊戯坐(ゆげざ)二体の観音菩薩は対比が興味深い。
  南宋からの請来像、横須賀市清雲寺の滝見観音菩薩遊戯坐像
  は、右足を立膝にして座る。

  一方、松ヶ岡文庫像は右足を寝かせ、半跏踏み下げとなって
  いる。こちらの方が女性的で、穏やかな感じがする。

  仏日庵・地蔵菩薩坐像の法衣垂下、伝宗庵像の土紋は、鎌倉
  らしい特徴を備えている。
⑩観音菩薩像       ⑪地蔵菩薩坐像

  浄智寺の地蔵菩薩坐像(⑫)は、京都・六波羅蜜寺、運慶作の
  地蔵菩薩坐像(夢見地蔵)と似ていると言われる。確かに、
  見比べると、同じような顔立ちをしている。
  
  一光三尊形式の阿弥陀如来及び両脇侍像(⑫)は善光寺式の
  三尊像。善光寺の秘仏本尊の模造か? 中尊の螺髪部分は
  外せる構造になっている。銅造であり、小像ながら重厚感と
  精緻さを感じる。

  ⑬の韋駄天立像、伽藍神像も禅宗寺院で良く見る仏像であり、
  守護神として、決まった堂宇に祀られる。韋駄天立像の土紋
  と伽藍神の目が印象深い。
⑫地蔵菩薩坐像、阿弥陀三尊立像 ⑬韋駄天立像、伽藍神坐像

  鎌倉には「鎌倉三十三観音霊場」「鎌倉二十四地蔵尊霊場」や
  「六阿弥陀霊場」がある。

  長谷寺の本尊は十一面観音、建長寺の本尊は地蔵菩薩であり、
  鎌倉の大仏は高徳院の本尊・阿弥陀如来である。今回の展覧会
  に、観音や地蔵が多い理由が分かる。

  三井記念美術館の展覧会はいつも楽しませてくれる。今回も
  期待通りの展覧会で満足‼