2021年8月20日金曜日

<神仏習合❻> 杉並区の八幡宮・八幡神社

杉並区の八幡宮・八幡神社は下に掲示の一覧表の通りである(①)
(東京神社庁HPによる)
筆者の自宅近くにある神社でありながら、今まであまり注目して
眺めていなかった。改めて、その由緒等確認して行きたい。

①杉並区の八幡宮・八幡神社一覧

1.ご祭神について
  先ず、ご祭神に注目すると、応神天皇(八幡大神)だけの一柱
  祀る神社は、井草八幡宮荻窪八幡八幡神社の3社。

  大宮八幡宮では、応神天皇の父母である、仲哀天皇と神功皇后を
  祀り、3柱となっている。宇佐神宮の比売大神(ひめおおかみ)に
  代り、仲哀天皇が加わり、3神の中の1神となっている。いわば
  ファミリーでまとめたような印象がある。

  天沼八幡では、比売大神の中から市杵島姫命を選び、2柱で祀る。
  ここでは、市杵島姫命が弁才天と習合したことを意識して祀って
  いるようであり、宇佐神宮での比売大神を引き継いだのではない
  のかもしれない。

  ここで、ご祭神の祀り方を次のように分類してみた。
  Aタイプ…総本宮の宇佐神宮と同じく、八幡大神、比売大神、
       神功皇后の三柱を祀る
  Bタイプ…Aタイプの比売大神を別の神に代え、三柱を祀る
  Cタイプ…八幡大神ともう一柱の神で二柱を祀る
  Sタイプ…八幡大神の一柱だけを祀る

  この基準で見ると、杉並区の八幡宮・八幡神社は
   B(1)、C(1)、S(3)となる。

日本三大八幡宮について】
 ここで日本三大八幡宮(②)のご祭神を見て、比較してみたい。
 三大八幡宮と言う時に、宇佐神宮、石清水八幡宮に筥崎宮が、加わる
 場合と、鶴岡八幡宮が加わる場合の二通りがあるようだ。
 
 各神宮のご祭神は次のようにタイプ分けされる。
 宇佐神宮…A、石清水八幡宮…A、筥崎宮…B、鶴岡八幡宮…A or B

 いずれも、三柱を祀っていることは共通する。筥崎宮では、玉依姫命
 (たまよりひめのみこと)と言う神武天皇の母君となっている。
 鶴岡八幡宮の比売神(ひめがみ)は諸説あり、比売大神のことかどうか
 は定かではない。従って鶴岡八幡宮の分類をA or Bとした。
②日本三大八幡宮  
 【比売大神について】
  宇佐神宮での比売大神とは、アマテラスとスサノオの誓約(うけい)
  から誕生した三女神のことであり、田心姫神(たごりひめのかみ)、
  湍津姫神(たぎつひめのかみ)、市杵島姫神のことを言う。
  市杵島姫神は弁才天と習合したことで、特に有名になっている。

  ところで、三女神なら三柱であろうに、比売大神を一柱とされている
  ことも謎だ。

  同じ八幡宮・八幡神社と言っても、ご祭神の祀り方が違っていること
  が分かる。共通しているのは八幡大神だけである。今後は、八幡宮・
  八幡神社のご祭神をタイプ別にA,B,C、Sでチェックするのも面白い。

2.神社の創祀・創建年代
  上記の一覧表(①)で、神社の形態がとられた年代を順に見ると、
  ①荻窪八幡…寛平年間(900年頃)
  ②大宮八幡…康平六年(1063年)
  ③井草八幡…平安時代末期
  ④八幡神社…長録元年(1457年)
  ⑤天沼八幡…天正年間(1573年-1591年)

  京都の石清水八幡宮の創建が貞観二年(860年)であるから、荻窪
  八幡はその直後と言える。大宮八幡宮は鎌倉の鶴岡八幡宮と創建年
  が同じ。

 【石清水八幡宮創建について】
  ②記載内容の中で、注目するのは石清水八幡宮の創建についてである。
  創建者が大安寺の僧、行教(ぎょうきょう)和尚となっている。僧侶
  が神社を創建するとは奇異な感じがする。
  
  石清水八幡宮 宮司の田中恆清氏がある講演会で、次のように話され
  ている。
  『奈良の僧行教が宇佐八幡大神のお告げを受け、翌年、男山に八幡神
   を勧請したのが始まりです。僧である行教が創建したことから分か
   るように、当初から仏教色の濃い神仏習合の宮寺(みやでら)で、
   国家鎮護の神として、歴代天皇が参詣するなど、伊勢神宮に次ぐ、
   「天下第二の宗廟」として信仰を集めました。』

  宇佐神宮が平城京の守護神であり、石清水八幡宮 は平安京を護る役割
  を担っていた。地理的にも、平安京の裏鬼門(南西)に建立された。

 【鶴岡八幡宮創建について】
  ②に記載の通り、鶴岡八幡宮の創建者は源頼義(みなもとのよりよし)
  である。頼朝から5代前に当たる源氏の棟梁。(③源氏略系図 参照)
  石清水八幡宮に戦勝祈願し、そのお礼に創建したのが鶴岡八幡宮。
  
  聖徳太子が生駒山で戦勝祈願し、勝利後に四天王寺を建立した逸話と
  重なる。
③源氏略系図

以上を総括すると、杉並区の八幡宮・八幡神社の中で、大宮八幡宮、
井草八幡宮、荻窪八幡は源頼義の凱旋によって創建、整備されたこと
は明らかである。また、頼義の子、八幡太郎義家は、石清水八幡宮で
元服したから、そのような名がつけられた。石清水八幡宮との因縁が
深く、源氏の守護神にもなって行く。

<続く>



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